辛い思いもせず17キロも減量!

続いては、都内のオフィスに勤務する“自転車ツーキニスト”として20冊超の著作がある疋田智氏。14年前に、江東区にあった自宅から港区まで自転車で通い始めた。

「意外に思われるかもしれませんが、電車より速いんですよ。約50分の通勤時間が35分に短縮されました」

自転車:後ろ向きな気持ちも走るうちに「どうでもよく」なる/自転車通勤を勧める疋田智氏。『自転車生活の愉しみ』『自転車ツーキニスト』ほか著書多数。

しかも、満員電車に乗らなくてすむ。苦痛だった通勤時間のすべてが、“楽しい自分の時間”になった。

「以前は寝つきがよくなかったんです。でも自転車通勤を始めてからは、会社に着いたらスパッと仕事に入れるし、夜に帰宅したらスパッと眠れて翌朝もスキッと起きられる。前は脳ミソの疲労だけだったのが、今は体の適度な疲労も加わるのがいいみたいです」

しかも、84キロあった体重が1年で67キロと実に17キロも激減。カロリーを消費しやすい体質に変わったのだ。血糖値、コレステロール、中性脂肪のC判定が12年間ですべてAに転じた。

「カロリーの消費は、実はランニングより多い。なのに、ハードなスポーツのような“苦しんで達成”する感覚もありません。最近、近場に引っ越したらまた太り出したので、皇居を一周してから出勤します。自転車での通勤距離は10キロ前後が理想ですね。15キロが限度かな。片道1時間を超えるとさすがにしんどい。地方都市なら、15キロ圏外に住む人は少ないのでは」

ランニングを始めた人は、往々にして膝や関節を痛め、始める前よりも歩くのが億劫になりがちだ。

「でも自転車は関節への負担がなく、体幹や腸腰筋などが鍛えられます。これらの筋肉は60歳以上になっても鍛えることが可能なんです。医者が患者のリハビリにエアロバイクを勧める理由もこれ。因みに、飲酒後に乗るのはNG。雨の日は無理して乗りません」

中学時代に打ち込んだ水泳は、泳ぐ最中に見える風景がプールの底ばかりなのがストレスだったとか。

「風景が刻々と変わり、寄り道も楽しい自転車はそれがない。気持ちが後ろ向きだったり、嫌なことを考えるときもありますが、たいていは走るうちに『どうでもいいや』になってしまう」

ほんと、いいことばかりですよ、という疋田氏の表情には実感がこもる。

自転車に乗っているときは、音楽や語学といった情報のインプットはしない。なのに、本や雑誌の連載原稿は、乗った後だとどんどん進むという。

「道路を走る緊張感とバランス保持のために、大脳以外はすべて動いている状態。すると、大脳皮質が動こう、動こうとするらしく、走行中に仕事上の考えが勝手に整理されている気がします。私は仕事が早いほうだと思いますが、これは絶対に自転車のおかげ。考え事をするのに最適な場所として『馬上、枕上、厠上』という昔の言葉がありますが、私の“馬”は自転車ですね」

では、お勧めの自転車は?

「最初は20万円弱のロードバイクがいい。自転車の性能イコール“軽さ”ですが、これは約8キロ。約20キロあるママチャリよりずっと軽い。乗っていて楽しいと感じるには、どんなに重くても12キロが上限です。高いと感じるなら、5万~6万円のクロスバイクから始めるといい」

ことほど左様に、身体は心のケアに直結する。「そんなに単純に解決するなら苦労しない」とアタマで結論を出す前に、軽く汗を流してみては?

※すべて雑誌掲載当時

(坂本道浩=撮影 PIXTA=写真)
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