知識はあるのにアイデアが浮かばない、物事がうまく整理できない……。そんな悩みを抱えているなら、一度あれこれ思案することをやめ、身体から脳の機能を高める方法にアプローチしてみてはいかがだろう。
「集中力がなく些細なミスが続く」「以前なら難なくこなしていた仕事を億劫に感じる」。こうした悩みを持つ人が増えている。流行の脳トレや思考法への関心が高まっているのも、そのためだろう。
実はこうした症状が起こる原因の一つに、ストレスや疲労が引き起こす身体の硬縮がある。思い出してほしい。緊張を強いられる場面で身体が思うように動かないばかりか、精神面でも自分を制御できなくなることは、経験上誰でも知っているだろう。普段なら複数の条件を総合的に検討して冷静に判断できる人が、大きな商談で相手の言葉に惑わされて自社に不利な条件での契約に署名してしまうといったケースも珍しくない。
これは固まった身体が脳の働きに悪影響を及ぼし、とっさの判断力や瞬発力を鈍らせているのだ。しかも、緊張を強いられる場面に限らず、疲労などで慢性的に身体が凝り固まっていると、脳機能も低下してしまうものなのだ。だとすれば、身体の凝りを取り除いてゆるめれば、脳の働きや思考力を高めることができるのではないか。賢明な読者はすでにお気づきだと思うが、まさにその通り。その証拠にいかなる分野でも優れたパフォーマンスを見せている人は例外なく、身体がゆるんでいる。
大リーガーのイチローや水泳の金メダリスト北島康介などのスポーツマンはもちろん、舞踏家、演奏家、さらには優れた経営者も総じてゆるみ度が高い。古くは松下幸之助、本田宗一郎から、最近では京セラの創業者である稲盛和夫氏や、ソフトバンクの孫正義氏まで、彼らの何気ない所作や表情、さらには思考パターンなどを観察していると、随所にゆるんでいる様子が見て取れる。