2040年にはわが国の寺院は現在の3分の1が“消滅”する
筆者はこのデータをもとに、独自の分析と実地調査を加え、2015年に『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』(日経BP)を発表した。本書では2040年には、わが国の寺院は現在の3分の1程度が「消滅(不活動宗教法人)」、あるいは「消滅同然の状態(無住寺院)」になってしまうと指摘し、大きな反響を得た。
現在、全国には仏教寺院がおよそ7万7000ある。既に「消滅した寺院」は1万7000か寺程度あると考えられ、うち宗教活動を停止した「不活動寺院」は、2000カ寺以上(神社を含めれば3500施設ほど)に上るとみられる。
過疎地にある寺院は、別の寺の住職が兼務しながら、かろうじて存続させている状況の寺も多い。不活動寺院(法人管理者がおらず、不動産が放置された危険な状態)や、無住寺院(名義上の管理者はいるものの住職が常駐していない寺、いわゆる空き寺)の増加は、近年はじわじわと都市部にも及んできている。
寺院消滅は複雑な要素が絡みあい、一概に原因を特定することはできない。たとえば、以下のような背景が考えられる。
②人口減少、少子化、高齢化、核家族化といった、近年の社会構造の変化の影響を受けて檀家が急激に減少し、寺院消滅に向かいつつあるケース
③「30年に1度」といわれる伽藍の修繕のための資金が集まらないケース
④東日本大震災や能登半島地震などの大規模災害で倒壊し、再建できないケース
⑤主に都市部の寺院で、大規模納骨堂を建設するなどの過度な投資をしたにもかかわらず、販売不振に陥り、経営破綻してしまうケース
⑥住職が勝手に宗教法人格をブローカーに売ってしまうケース
⑦寺院の後継者が現れないケース
――などである。
寺院存続の問題は、どの仏教教団も切実な問題として捉えてはいる。しかし、その実態把握調査は、一部の大規模な教団のみに留まる。実際に、教団を挙げて過疎化対策、後継対策などに乗り出し、効果を挙げているところは皆無だ。このままでは、時間の経過とともに、右肩上がりで寺院が消滅していくことになる。