人間ドックの出費はリーズナブルと考える
ただし、人間ドックでは健康保険が使えないので、それなりの費用がかかります。含まれている検査項目や病院によって違ってくるので一概にはいえませんが、半日ドックで数万円、1泊2日のドックなら7、8万~十数万円からというあたりが目安でしょうか。
可能なら、脳ドックやPET(ポジトロン断層法)によるがん検診など、もっと精度の高い専門的なチェックも受けておけば、いっそう安心です。
この安心感は「どこかおかしいのではないか」と病気や体調の不安におびえず、毎日、平穏な気持ちで暮らしていくためのよりどころとなります。決して安くはありませんが、人間ドックの費用は結果的にリーズナブルな出費といえると私は考えています。
もしどこかに異常が見つかったら、むしろ幸運だと考えましょう。そのまま気づかずに暮らしていけば、より悪化してから病院に駆け込むことになり、治療には多くの時間やコスト、苦痛や心配がかかることになってしまいます。
貴重な老後の時間を「病院とのつきあい」に費やすことほど、もったいないことはないと思います。
「愚痴は絶対に言わない主義」の69歳男性の末路
フランスの箴言作家ラ・ロシュフコーは、「語り合ってみて理性も好感も感じられない人間が多いのは、自分の言いたいことで頭がいっぱいで、相手の言葉に耳を貸さない連中が多いからだ」と語っています。
耳の痛い言葉ですが、人間は本来、他人の話を聞くよりも自分の話をするほうを好みます。不満や愚痴はとくにそうですね。
なぜ話したがるのかというと、自分が抱えている不満や愚痴を口に出すとスッキリすることを経験的に知っているからです。これは「カタルシス効果」という心理作用で、フロイトが精神療法として取り入れたほど効果があるものなのです。
しかし、昔気質のシニアのなかには「愚痴は絶対に言わない主義」という人も少なくありません。69歳のある男性も、そんなひとりでした。
子供の頃から父親に「愚痴を言うのは男の恥」と言われて育ってきたので、仕事や人間関係に不満を感じても、ずっと口に出せませんでした。
すると、50歳を超えてから首に赤いブツブツができるようになり、同時に背中にも痛みが出始めたのです。病院へ行くと、「帯状疱疹」との診断でした。帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスが原因で発症する疾患です。
この男性は、「ストレスを溜め込んだ場合も、免疫力は低下するのですよ」と医師に言われてハッとしました。不平不満を溜め込むあまり、それがストレスになっていたと自分でわかったからです。
それからは、奥さんにときどき愚痴を言うようになりました。「またなの」という顔をされることもあるようですが、言い終わった後は気分爽快で、帯状疱疹もすっかり回復したそうです。