病気や不安に慣れることも必要

この心配がさらにふくらむと、「自分は孤独死するのではないだろうか」という不安が頭から離れなくなります。

意外なことに、若い頃に「病気ひとつしたことがない」という人ほど、このような不安に強く苛まれる傾向があるようです。病気に対する免疫がないからかもしれませんね。

私の知り合いに、身長175cmを超える筋肉質の男性がいます。これまで「はしか、おたふく風邪以外の病気にかかった覚えがない」という人ですが、そんな彼にちょっとした異変が起きたのは74歳になったときでした。

ある日突然、右耳の聴力が落ちているのに気づいたのです。あちこちの病院にかかり、検査を受けましたが、原因はまったくわかりません。

完全に聞こえなくなったわけではありませんが、彼は「年をとったなあ」とガックリきて、「こんな調子で体のあちこちにガタがきて死んでしまうんだ」と悲観的になってしまいました。

それからというもの、出歩くのも億劫になって、引きこもり気味の生活を送っているようです。

たくさんの持病を抱えている人からすれば、「軽い発熱」や「聴力が少し落ちた」程度では病気のうちに入らないのかもしれませんが、これまで大病をしてこなかった人は、ちょっとしたことでも不安になり、大きなストレスを抱えてしまうのです。

こうしたことは不慣れからきているように思います。その意味でも多少は“病気慣れ”しておいたほうがいいのかもしれません。

食事中に窓の外を見ている高齢男性
写真=iStock.com/ChayTee
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「老いの兆し」を感じたら精密な健康診断を

サラリーマンや公務員など、現役で仕事をしている間は会社や役所で定期的に健康診断を受けているのが普通です。扶養家族である奥さんも、会社の指定する病院などで健康診断を受けているケースも多いはずです。

定年というのは、こうした企業主体の福利厚生制度からはずれていくことでもあるわけです。一般的には、その頃から健康状態にほころびが見え始めます。そんな時期になって定期的に健康診断を受けられなくなるのは、なんとも皮肉な話だと思います。

私は、「老いの兆し」を感じるようになったら一度、精密な健康診断を受けるとよい、とおすすめしています。

銀婚式(結婚25周年)を迎えた、ひとり暮らしを始めた、還暦になった、定年退職した……といった人生の節目に人間ドックに入り、全身の点検をしてみてはいかがでしょうか。

ときたま「市の健康診断を毎年受けているから自分は大丈夫」という人もいますね。たしかに市町村の健康診断、あるいは企業などでおこなう定期健康診断は基本的な項目は押さえてあります。

でも、いよいよ老いに向かう時期に受ける健康診断の内容としては「必要最小限度」と考えておくくらいにしましょう。