第1弾は、2月1日からIBC岩手放送など4社。次いで、5日にはRKB毎日放送など7社がスタート、7月から東海ラジオ放送、8月から北陸放送が順次加わり、13社34中継局が最長で25年1月31日まで放送を休止する。

もっとも、多くのAMラジオ社は、すでに難視聴や災害対策として「FM補完放送(ワイドFM、90.0~94.9MHz)」という名称で、AM放送と同じ番組を提供するサイマル放送を行ってきた。日本民間放送連盟(民放連)によると、AM放送のエリアの7割程度までカバーしており、試験停波するエリアでは実質的な混乱はないという。

このため、実証実験の結果が「良好」と確認できれば、各社はこぞって「AM廃止」に進むとみられる。

一方、NHKは、第1と第2のAM放送を26年度に一本化するものの廃止はせず、現行のFM放送と併存する方針を明らかにしている。

28年の全国ラジオ地図はまだら模様

そうなると、28年時点の全国ラジオ地図は、基本的に、現行のAM3波(民放、NHK2波)・FM2波(民放、NHK)体制から、AM1波(NHK)・FM3波(民放、旧AM、NHK)体制に大きく変わる見通しで、関東、関西、中京などの大都市圏は、AM1波と4波以上のFM波が混在することになりそうだ。

ただ、AM放送を全面的にFM放送に転換するケースもあれば、FM転換後もAM放送を一部続けるケースもある。在京のTBSラジオ、ニッポン放送、文化放送の3社は28年に完全FM化の構えだが、判断を決めかねている社も少なからずいるという。

したがって、「AM廃止」といっても、ある日突然、全国からNHK以外のAM放送が消えてなくなるわけではなく、まだら模様になりそうだ。

どうもすっきりしないが、なぜだろうか。

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ここで思い出されるのは、テレビの地上放送のアナログからデジタルへの切り替え(地デジ化)だ。11年7月24日(東日本大震災の影響で12年3月31日まで延期した岩手・宮城・福島を除く)をもって、全国一斉にアナログ放送が見られなくなったことを、多くの人が覚えているだろう。

地デジ化は、電波の有効利用やテレビ放送の高画質化・高機能化を推進するため、国策として進められたので、全国一律に有無を言わさずアナログ放送を停波してしまった。

これに対し、「AMのFM転換」は、台所事情が苦しいラジオ社の要請が出発点で、国が音頭をとった地デジ化とは背景がまったく異なる。

民放連は19年3月、総務省に対し「民放ラジオ事業者の財政力で実施できる設備投資には限界がある」と訴え、「遅くとも2028年の再免許時までに、AM放送事業者の経営判断で、AM放送からFM放送への転換や両放送の併用を可能とするよう制度を整備する」ことを求めた。

こうしたAMラジオ界の申し出を受け、総務省は20年11月にFM転換のための実証実験の考え方を示し、23年3月には具体策を提示。ついに24年2月から「AM廃止」に向けて実証実験が始まったのである。