ラジオ100年、AM放送廃止の歴史的転換点を迎える

まもなく日本中のほとんどの地域で、ラジオのAM放送(中波放送、526.5~1606.5kHz)がなくなることをご存じだろうか?

トラックやタクシーのドライバーには定番のトーク番組、野球ファンが外出先でかじりついたプロ野球の実況中継、シニア世代には懐かしい受験勉強をしながら聴いていた深夜放送、記憶に新しいところでは東日本大震災での貴重な情報源……。かつて暮らしに密着していたAM放送が、FM放送(超短波放送、76.1~94.9MHz)に転換することを前提に、廃止に向けてカウントダウンに入った。

テーブルの上に置かれた小さなラジオ
写真=iStock.com/zdravinjo
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リスナーの反応や社会的影響を検証するとの名目で、全国47社のうち、まず13社が、2月から8月にかけて順次、試験停波に踏み切っている。中でも、山口放送はいち早く、7月末には県内全域ですべてのAM放送を休止する。そして、2028年秋には、大半の民放ラジオ社が、AM放送を終了する方針だ。

だが、転換後のFM放送を受信できるラジオの普及率はまだ5割程度で、28年までに広く行き渡るかどうかは見通せない。

一方で、パソコンやスマートフォンで受信できる番組のネット配信サービス「radiko(ラジコ)」や「ポッドキャスト」が急速に浸透、ラジオの聴取手段は多様化しており、ラジオのイメージは様変わりしつつある。

1925年にAM放送で始まった日本のラジオ放送は、まもなく100年。1世紀の時を経て歴史的転換点を迎えている。

13社34中継局が試験停波を実施

「AM廃止」は、正確に言うと、全国の民放AMラジオ47社のうち、北海道2社と秋田県1社を除く44社が、2028年秋の放送免許更新をめどにFMラジオ社になることを目指そうというスキームだ。

AMラジオ各社は21年6月、AM放送からFM放送への転換に向けたロードマップを公表。今回の試験停波は、目標実現に向けた実証実験の第一歩となる。