こうしたバイアスから抜け出すためには、認知バイアスがかかっているかもしれないと自分自身を疑ってみること、つまり客観視をすることが認知バイアスから脱却する第一歩です。ところが、その脱却を妨げる認知バイアスに『確証バイアス』というものがあります。これは「人は、自分にとって都合がいいものや、信じたい情報ばかりを集めて信用してしまう」というもので、具体的な例を挙げると「洗濯は女性がやるもの」と思っている男性は、同様の意見を言っている芸能人の発言や、女性が洗濯をしているというデータばかりを集めてしまう……といった形です。この確証バイアスにより、パートナーに家事を押し付ける理由ばかりを集めてしまうことがあります。

プレゼントより毎日の感謝を

円満に家事を分担するためには、先述のように「自分が認知バイアスに陥っているのではないか?」「偏った意見を集めているのではないか?」と自問自答することのほかに、日ごろのコミュニケーション、つまり声掛けや頼み方を変えてみることも有効です。

まず試してみてほしいのが、「家事をお願いすることは、悪いこと」と考えないことです。私の経験上、うまくいっていないカップルほど、頼み事やお願いをとても言いづらいことだと考えています。お願いをすることを良くないことと捉えていると、言い出しづらくなって伝えるのがギリギリになってしまったり、気を使いすぎるあまり伝わらない言い方になってしまったりと、かえってパートナーの負担が増えるケースが少なくありません。「○○が必要だから、△△をしてくれると、すごく助かるよ」といったように、明確かつポジティブな言い方をすると、お願いされたほうも気持ちよく応えやすくなるでしょう。

また、お願いする際に気を付けてほしいのが、「無理ならいいんだけど」「忙しかったら大丈夫」という、あいまいな言い方です。「難しければやらなくてもいい」という気遣いのつもりで言ったとしても、ネガティブなニュアンスが含まれるため「それならなんで言うの?」と反感を買ったり、「しなくてもいいんだ」とお願いが流されてしまったりというケースが生まれます。

そしてお願いをする際は、パートナーが担当してくれている家事へのリスペクトも欠かさないようにしましょう。何か仕事を頼むときは「いつも○○をしてくれて、本当に感謝してるよ。もしできたら△△もしてくれると、すごくありがたいな」といった形で、日ごろやってくれている家事への感謝を伝えましょう。特に女性に対しては有効な働きかけです。

男性は結婚記念日や誕生日に大きなプレゼントを贈って感謝を伝えることが多いのですが、「プレゼントよりも、日常的に感謝や愛情を伝えてほしい」と考える女性はとても多いです。日ごろの感謝をマメに伝えたり、日常の話を表情豊かに聞くことで、よりよい関係を築くことができます。

逆に、女性から男性にお願いをする際は、なるべく具体的に頼むことがコツです。男性は解決策を考えたり、解決に向かって動くことを好む傾向があるので、「アイロンは往復させずに一方向にかけて」「ミルクは35度まで冷ましてからあげて」といった形ですね。ミルクの温度のように、具体的に数字を出してお願いをすると間違いが起こりにくくなりますし、お願いされたときにイメージもしやすくなるので、男女問わず試してみてほしい言い方です。