第三の落とし穴は「初心者は損切りができない」というリスク

第三の落とし穴は、新NISAを始めたばかりの投資初心者は値下がりしても売ることができないということです。投資に慣れている人は「損切り」、つまり買ったときより値が下がって損失が出ている株は売るという判断ができます。投資とは売買を繰り返しながら利益を出していくものだとわかっているからです。

しかし、初心者はなかなかその判断ができません。一生懸命貯めたお金で買ったものを売ることに抵抗を感じて、つい保有し続けてしまいがちです。持ち続けた結果、値上がりに転じる日がくればいいのですが、私は今の日本の状況では当分そうはならないだろうと思っています。

投資を始めるとき、いちばんに見るべきなのは景気です。しかし、世界的にいわれている「株価は半年先の景気を先取りする」というセオリーは、実は日本には当てはまらないのです。

 

この国の株は長らく日銀が買い支えてきたため、日本は株価と景気が連動しない国になってしまいました。実際、アベノミクスの間も株価は上がったものの、景気はまったく回復しませんでした。

リーマンショックの時はほとんどの投資商品が元本割れした

今も、株価は上がったのに実質賃金や消費はどんどん下がっています。景気が回復しているという人がいる一方で、国民の多くはそれを実感できずにいます。実際は日本はいまだに不況であり、初心者が株を始めるには非常に危ない環境になっています。この状況を見るに、私は新NISAだから大丈夫、投資信託だから大丈夫とはまったく思えません。

投資には「卵は一つのカゴに盛るな」というセオリーがあります。全部の卵を一つのカゴに入れていると、カゴを落としたときすべての卵が割れてしまうが、いくつかのカゴに分けておけばそのうち一つを落としてもすべての卵を割ってしまうことは避けられる――。投資先や投資時期を分散させればリスクを減らせますよ、ということですね。

これが本当なのかどうか、私はリーマンショックの際に自分がしていた投資で検証してみました。その結果、見事に全部のカゴが落ち、すべての卵が割れてしまいました。ただ一つ割れなかったのが預金です。生卵ではなくゆで卵だったから助かったといえるでしょう。