「30年から40年のスパン」「つみたては投資信託のみ」という落とし穴

第一に、新NISAは長期間持っておくものだから、一時的に値下がりしても結局は得になるといわれています。しかし、日経平均株価はバブル期の値を取り戻すのに30年もかかりました。利益が出るのに時間がかかりすぎですし、この先落ちてもまた戻るなんて誰にも保証できないのに、そんなことをいうのはあまりにも無責任ではないでしょうか。

第二の落とし穴は、新NISAの「つみたて投資」では投資信託しか買えないということ。そして、私は投資信託が大嫌いです。なぜなら無責任だからです。株は一時的に値下がりしてもその間に配当が出ることがあるので何とかがまんできますが、投資信託は利益が出ない期間もずっと手数料をとられ続けます。

そして、その手数料をとって投資信託を運用しているファンドマネージャーたちは、おそらく長期を見据えての運用など考えていません。彼らは数カ月ごとに成績が集計されるので、そこで利益を出せていなかったらクビになってしまいます。ですから私には、ファンドマネージャーに任せておけば20年、30年先のことを考えた運用をしてくれるだろうとはとても思えません。

銀行や証券会社は値下がりしても責任を取ってはくれない

銀行や証券会社も、値下がりしても責任をとってはくれません。たとえば、窓口担当者にすすめられて投資信託を買ったものの、値が下がったため心配になって再度窓口に行ったとします。

そうしたら「長期で見れば大丈夫」といわれたので、そうかと思って数年待った。それでも値が戻ってこないので、もう一度窓口に行ったら担当者が変わっていた――。これはよくある話です。「大丈夫だ」という人たちは、実際には誰も責任をとってはくれないのです。

【図表2】金融庁「長期・積立・分散 投資のシミュレーション(例)」
※税金・手数料等は考慮しておりません。上記の結果は将来の運用成果を保証するものではありません。出所=Bloombergのデータを基に金融庁作成出典=金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック

また、今のところ、新NISAのつみたて投資で買える投資信託は300本弱ほどに限られています。全体では6000本ぐらいの商品がありますが、実際に買えるのは金融庁が定める基準を満たしたもののみです。

そのため、銀行や証券会社は「国が選んだ商品だから大丈夫」という口説き文句を使うことがままあります。でも、どんな株でも上がるときもあれば下がるときもあるわけですから、大丈夫なはずがありません。そんなことは誰も保証できないのです。