最も望ましいのは「営業C/F:+ 投資C/F:- 財務C/F:-」

その代表的なパターンを、ここで5つ紹介しておきましょう。

(1)優良タイプ(営業C/F:+ 投資C/F:- 財務C/F:-)

本業でガンガン稼ぎ、そのお金を将来の成長のために積極的に投資し、それでも余るお金を借入の返済や株主配当に回すパターンです。

多くの優良企業がこのパターンであり、最も望ましいキャッシュ・フローの組み合わせであると言えます。

(2)積極投資タイプ(営業C/F:+ 投資C/F:- 財務C/F:+)

本業によって稼いだお金と、外部から調達したお金を、将来のための投資に積極的につぎ込んでいるパターンです。強気の勝負に出ている会社はこのパターンが見られます。

(3)ジリ貧タイプ(営業C/F:- 投資C/F:+ 財務C/F:+)

本業で失ったお金を、事業売却や外部からの資金調達によって補填しているパターンです。この場合、早い段階で止血をしないと倒産に追い込まれてしまいます。苦境に立たされている会社は、大半がこのパターンです。

ひとつ実例を挙げましょう。エンターテインメントのエイベックスです。新型コロナウイルスの影響を強く受けた同社の経営は苦境に立たされ、2020年3月期の営業キャッシュ・フローは40億3200万円のマイナス、2021年3月期は64億8000万円のマイナスになりました。

こうしたなか、同社は2017年12月に開業した、東京・南青山にある本社ビルを売却しました。これによって2021年3月期の投資キャッシュ・フローは700億4100万円のプラスになりました。

コロナ明けは徐々に業績が回復し、2023年の営業キャッシュ・フローは91億9200万円のプラスになっていますから、ようやくひと息つけたところです。この事例は、苦境に立たされた会社が、持っている資産を売却してお金をつくり、厳しい局面を乗り切ろうとしている典型例と言えるでしょう。

すべてがマイナスのパターンもあり得る

(4)ベンチャータイプ(営業C/F:- 投資C/F:- 財務C/F:+)

本業はまだまだ未熟ですが、将来を見越して外部から調達したお金を使い、積極的に投資しているパターンです。創業間もないベンチャー企業に多く見られます。

(5)忍耐タイプ(営業C/F:- 投資C/F:- 財務C/F:-)

ちょっと変則的ですが、全部のキャッシュ・フローがマイナスというパターンです。これは手元のお金を食いつぶしながら、事業が好転するのを耐えながら待っている状態にあると考えられます。

もちろん、必ずしも「このパターンならこんな状況にある」とは言い切れませんが、その企業の現在地をおおまかに把握することができますので覚えておいて損はありません。