「ネパール居酒屋」を名乗る謎の店も増加

ブローカーの横行とともに、味がともなわないカレー屋が増えた理由は留学生の参入だ。とある日本語学校の関係者、Tさんが言う。

「ネパールで飲食店を経営したこともない学生上がりのオーナーがなにか商売をやろうと思ったとき、安易というか、カンタンにスタートできるのがインド料理店なんです」

なにせ店舗から資金調達までアレンジしてくれる先輩たちがいるのだ。そこを頼って店を開くが、提供するのはムグライ料理の流れをんではいるものの、テンプレ的な外食用インド料理を模倣したなにか別のもの。ネパール料理は日本人にはウケなかろう、「インド」が店名にないとお客が入らないだろうと、ほとんど信念のように思っているため「インド・ネパール料理店」なんて看板にも入れて店を開く。

留学生時代に居酒屋でアルバイトした経験を活かして、たこわさびや枝豆なんかも出して生ビールを提供するくらいのアレンジはする。「ネパール居酒屋」と名乗る店もやたらに出てきた。原価の安いメニューを並べて、味や品質をおざなりにする人もいる。

「ナンとタンドリーチキン、カレーを適当に出していればお客が来ると思ってる。そんな人もいます」

写真=iStock.com/simona flamigni
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「ちゃちゃっとカレーを作ればいい」と語る留学生たち

もちろん真剣に取り組んでいる店主がほとんどであろうと思うのだが、料理に熱意と誇りをあまり感じない店も見るようになったとTさんは感じている。

「ネパール人の留学生を集めたイベントで卒業後の進路の話になって『レストランを経営して日本に留まりたい』って答える子がいたんです。その理由を聞いてみたら『ちゃちゃっとカレーつくって出せばいいんだからカンタンじゃないですか』だって。アタマに来て、だから本当のネパールの良さが日本で広まっていかないんだって言ったの」

ごもっともである。ネパール料理でもなく、インド料理の、それもおざなりなものを出す「インネパ」もあるのは残念ながら事実だろう。だから新しい店ができては消えていく。ある程度の運転資金も持たずに開業してしまい、息が続かずにあっさりつぶれる店もけっこうある。

成功したいからと「インド料理」にこだわり、日本人向けのメニューだと信じたものを出し、うまくいっている店をまねて、テンプレで勝負しているけれど、根本のところで商売を軽んじているのではないか……そんなことも思ってしまう。多少のアレンジを加えたところで「劣化コピペ」では生き残ってはいけないのだが、アイデアのあまり見られない店も多いのはなぜか。