A4・10枚を机に並べ俯瞰する
一方、論理の筋道を通すためには、大雑把な目次づくりから入り、細部を詰めていくというやり方が有効だ。たとえば中期経営計画の説明資料を作成するときの手順を紹介しよう。
最終的には担当者がパソコンでパワーポイントに落とし込むが、資料の骨子をつくり指示を与えるのは私の役割だ。この段階は、必ず手書きである。
最初に「目次」をつくる。どのような内容を伝えたいのか、紙の上に個条書きで書き出していく。ここで重要なのは、7割ほどの完成度で作業をいったんやめるということだ。
次に、A4のコピー用紙を10枚以上用意し、目次をもとに1項目ずつ内容を記していく。各項目の主題を大きめの文字で書き入れ、その下に図や絵、写真、フローチャートなどインパクトのある図版をスケッチする。図版を説明するキーワードも不可欠だ。
図版などの具体例が浮かんでこない場合もある。そのときは、だいたいのイメージを添えてスタッフらに具体化を指示する。
ここで使用するのは、新品の紙ではない。何かの資料をプリントアウトし、用済みになったものである。表にはだいたいパワーポイントのグラフが描かれている。
なぜ新品ではいけないのか。もちろん、もったいないという思いはある。しかし、別の理由も存在する。
われわれは複雑で変化が激しい現実に合わせ、新たな工夫を加えたり、別の道を探ったりしながら仕事を柔軟に進めていく。製品づくりも、計画策定も同じである。そういった「揺らぎ」や「交じり合い」が創造の現場には必要なのだ。
真新しい紙を前にすると、逆に創造性を阻害されるように感じてしまう。このことは、目次の完成度を7割にとどめることや、あえて手書きで言葉や図版をメモすることとつながっている。
別の例をあげてみよう。私はA5サイズのシステム手帳を愛用しているが、ここには手書きのメモのほか社内資料や新聞記事のコピーをファイルしてある。ファイルするときの分類は10種まで。いわば大分類主義である。あらかじめ細部まで予測し決め付けてしまうと、創造性を押し殺してしまうと思うからだ。
さて、目次の全項目を記入できたら、10枚ほどになる用紙群を広い机の上に並べてみる。それらを俯瞰しつつ、改めて全体の構成を練るのである。
このときに、目次を優先することはない。当初の目次はあくまでも想定にすぎず、適宜修正を加えていくものだからだ。したがって、構成ががらりと変わることもある。順番を並べ替えるだけではなく、ある項目について適切な説明ができないと判断すれば、別の中身に入れ替える。こうしてじわじわと改善を重ねていくのである。