ハラキリ、ゲイシャから抜け出せていない
このように、巷間「リアルだ」と絶賛されている「SHOGUN 将軍」を観て、私が覚えたのは違和感ばかりだった。
オペラ「蝶々夫人」に描かれている日本に対して抱くのと同種の違和感である。豪勢なセットをもちいて、照明や髪型にこだわっても、当時の日本の姿とズレていては、一見、リアルであるだけに、いっそうの誤解を招くことになる。
19世紀後半から20世紀初頭にかけ、欧米ではジャポニズムが大流行した。その際、欧米人にとって不可解な風習である切腹や芸者などが、いっそうのエキゾチシズムを添える要素として過度に注目されたが、その結果、彼らが抱く日本像は、彼らによる空想の世界に近づいてしまった。「SHOGUN 将軍」はそこから抜け出せていない。
日本をモチーフにしたファンタジーだという前提でヒットしたのならいい。しかし、これが「リアル」な日本だと誤解されるのはまずい。
そもそも、史料に記録されているこの時代の日本は、このドラマに描かれているよりもずっと清潔で、日本人はずっと礼儀正しかった。せめて、日本人は「SHOGUN 将軍」を観る際には、こうしたこと理解したうえで、エンターテインメントとして楽しんでもらいたい。