他社が成功したのを真似て、後追いで参入してもうまくいきません。二番煎じではインパクトがなく、消費者に「またか……」と思われるだけでしょう。短期間で展開するのは、追随者が出てくると顧客が分散し、宣伝効果が薄れ、フリーのビジネスモデルがあっという間に成立しなくなるからです。

BRICs経済研究所代表 
門倉貴史 

1971年生まれ。慶応大学卒。第一生命経済研究所などを経て、2005年より現職。『ゼロ円ビジネスの罠』など著書多数。

また、フリーを展開するには、提供する商品・サービスの品質がよいことが大前提となります。本を無料公開しても、内容がよくなければ口コミは広がりません。もし定価で販売しても「買いたい」と思う人が多い商品・サービスを無料で提供してはじめて、顧客の囲い込みができるのです。

マクドナルドは2009年7月24日から30日までの1週間に関東エリアで無料コーヒーの提供キャンペーンを実施し、客数を大幅に伸ばしました。

このキャンペーンは期間中は朝8~9時までの間、100万杯限定でプレミアムローストコーヒーが無料で飲めるという内容でした。その後、無料コーヒーキャンペーンは全国で実施され、同社の最高益更新に寄与しました。

無料コーヒーが成功したのは、あらかじめ期間と提供数を限定し、かつほかに追随者が現れなかったため、費用対効果の非常に大きい宣伝効果がもたらされたからだと考えられます。

一方で失敗例としては、1990年代に展開された無料パソコンがあります。当時、まだまだ高価だったパソコンを無料にしたために初期コストがかさんだうえに、すぐ追随者が現れて宣伝効果は消失。結局、コストだけかかって顧客の囲い込みができず、共倒れしてしまったのです。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=宮内 健 撮影=山下弘毅)
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