市場を細分化し“具体的な顧客像”を浮き彫りにする
変数によっていくつかの有望なセグメントが見つかったら、どのセグメントに進出すべきかを決定しなければなりません。その際、以下の点に考慮する必要があります。
・そのセグメントの消費行動を把握したアプローチの可能性
・将来そのセグメントが利益を生み出す可能性
・考えのうえで他社または他商品との差別化可能性
・セグメントのニーズや欲求を満たす商品、サービスを効果的に提供できる実行可能性
・セグメントと企業の目標や経営資源との整合性
そのうえで、先に挙げたコトラーが提唱している市場ターゲット戦略の4つの型をよく頭に入れて、標的セグメントを決めます。これらがセグメンテーションとターゲティングの基本的な考え方です。
セグメンテーションの手助けになる代表的な4つの変数(基準)による細分化を挙げてから、いくつかの市場細分化事例を見てみましょう。
②人口動態的細分化年齢、性別、家族構成、所得、職業、学歴、ライフステージなど
③心理的細分化パーソナリティ、ライフスタイル、価値観、性格、社会意識など
④行動による細分化求めるベネフィット(便益)、購入頻度、購入経験、使用率など
セグメンテーションとは市場細分化のことです。一くくりの市場を、顧客に関わる基準や変数を用いて共通の顧客をくくって、いくつかのセグメントに分割し、自社にとって有望なセグメントを見つけることです。最も重要なことは、セグメンテーションによって具体的な顧客像を浮き彫りにできるかでしょう。
「都内在住の妊婦」に狙いを定めた日本交通
(事例)
特定顧客を見いだした日本交通
タクシー市場はすでに飽和状態であり、新たな訪日外国客などの観光タクシーが増えているに過ぎません。そんな中で、既存客の細分化を通じて特定顧客を見いだしたのが日本交通です。
ターゲットを妊婦に絞り込んだのです。妊婦にとって、産気づいたときの病院までの交通手段は不安の種です。日本交通は新たなターゲットを「都内に住む妊婦」に絞り込みました。通常の予約センターとは別に、24時間365日つながる専用のコールセンターを用意したのです。登録料無料で、あらかじめお迎え先、予定日、届け先の病院名を登録しておくと、電話一本で行き先を言わなくても届けてくれる「陣痛タクシー」です。
これはいくつかの変数を掛け合わせて、都内の妊婦というセグメンテーションから生まれたユニークなサービスです。開始1年で都内の妊婦の2割が登録したようです。