ヨーグルトが逆効果になる便秘もある

40代の特に女性の場合、無理なダイエットで体内の水分が減って便秘になったり、更年期との関係で便秘になりやすい方がいます。そういった場合、便秘の薬だけで調整しようと思っても、下痢になってしまうなどうまくいかないことが多いです。

また、便通をよくしようと思って、いろいろな乳酸菌飲料を飲んだりヨーグルトを食べ過ぎたりしたことが逆効果になって治療に来る方も意外といます。

ヨーグルトは慢性便秘症には効果がありますが、過敏性腸症候群(IBS)という疾患によって便秘している方の場合には逆にお腹が張って、便秘が悪化することもあります。

よかれと思ったことでも悪化することがあるヨーグルトは、便通全般にいいわけではなく、慢性便秘など一部の症状だけに効果があることを理解しておくとよいでしょう。

40代はライフサイクルの変わる時期でもあります。生活の変化や暴飲暴食、仕事のストレスなども便秘の原因になります。自分の生活を見直してみて、ストレスを減らせるところがないか考えてみましょう。

出所=『便を見る力

便通をよくするためには、極端なことをしないのが大切。適度な運動とバランスのいい食生活という、当たり前のことが一番効果的です。

反対に、いつも通りの食生活を送っているのに便の調子が悪い場合は、何かの病気が隠れている可能性もあるので、自分で判断せずにまずは一度、消化器内科の診察を受けることをおすすめします。

もうひとつ便秘の理由として気をつけたいのは、IBSです。これは本書で詳しくお話ししますが、IBSの場合はストレスが原因なので、便秘薬を使っても効きません。

たとえば消化器内科で慢性便秘症と診断されて便秘薬を出されたものの、それがうまく効かずに病院を転々として、私のところに来てみたらIBSだった、ということも意外と多いのです。

ですから、まずは消化器内科へ行ってみて、あまり症状が改善されない場合は、ホームページにIBSの記載があるなど、IBSに詳しそうなクリニックを受診してみましょう。

その昔、便は草木の肥料として生活の中に共存していた

「皆さん今日は自分のうんこ見ましたか?」と聞いたとき、「トイレが自動で流してしまって見られなかった」という声をよく聞きます。「便はすぐに流すもの」になったのには歴史があり、そこには医学も関係しています。

その昔、便は草木の肥料として生活の中に共存していました。ところが近代化・都市化が進み人口密度が高くなった都市部で、便を介したコレラなどの感染症が蔓延しました。

昨今の新型コロナウイルス感染症のことを思い返してみてください。周囲の人が次々に感染していくことは、私たち人間に大変な恐怖心を与えます。コレラが大流行していた時代にも、緊急事態宣言の頃のような、パニックが起きていたと予想されます。

当時の人々は研究を重ね、感染の経路が便にあることを突き止めました。しっかりと下水道をつくって、便をばらまかないようトイレを設置し、そこだけで排泄するような政策が取られたのです。このようにして、便は一気に汚物、悪者の立場になりました。

昭和初期、つまり戦後はまだまだ日本中に病院が不足している時代でした。この頃はコレラほどの強烈な胃腸炎でなくても、おそらくロタやノロ、食中毒などの現代でも起こる胃腸炎で死者が出る時代でした。

胃腸炎で人が亡くなる理由は脱水症です。下痢や嘔吐おうとで食事や水分が取れずに脱水症になり、亡くなってしまいます。当時は病院が少なかったため、胃腸炎とわかっても病院にたどりつけず点滴を受けられなかったり、満床で入院できず、助けることができませんでした。

以降、全国に病院をしっかりと充足させるよう政策も動いていき、それに合わせて医師も増やすべく各都道府県に医学部が新設されていきました。