体調管理を徹底するにはどうすればいいか。医師の石井洋介さんは「かつて便は草木の肥料として生活の中に共存していたが、便を介したコレラなどの感染症が蔓延すると一気に汚物、悪者の立場になり『すぐに流すもの』になった。しかし今は、人間の寿命が行き着くところまで長くなってきた超長生き時代である。そんな時代にはいったん便を見ることでお腹や便の調子と向き合い、体調管理の一部として『便を見る力』を使いこなすことが必要だ」という――。
※本稿は、石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
「いつもの便の状態」=「平便」からのズレを見る
ここまで、カンベン(観便:便の観察)にあたって基準になるうんこの色と形について説明してきました。けれど、この基準から推測して、自分は腸の病気なのかも、とすぐに心配する必要はありません。
たとえば情報番組などで、大腸がんになると便が細めになると聞いて、「自分も便が細めなんだけど、大腸がんなんでしょうか」と心配する方もいます。
けれど、今までは普通だった便が突然細くなったわけではなく、昔から常に便が細めなら、それは体質と考えていいでしょう。それがその人の「平便」なんです。
自分の平熱がだいたい何度かということは、たいていの人が知っていますよね。そして平熱が35度台の人もいれば、36度台後半の人もいます。それと同じで、便も人それぞれに「いつもの便の状態」=「平便」があるのです。
それが人によって細めだったり、硬めだったり、ゆるめだったりするわけです。たとえばブリストルスケールでtype2やtype6のように、「正常」の枠外だったとしても、それがいつも通りなら心配はありません。
気をつけたいのは、そのいつもの状態とは違う便が続くときです。普段から平熱が35度1分くらいの人にとっては、36度5分でもちょっと熱っぽいわけです。
反対に37度の熱でも、平熱が36度8分くらいの人にとっては、ほぼ平熱の範囲になります。ポイントはいつもの状態からのズレで、それは便も同じです。だからこそ、自分の「平便」を知るために、毎日のカンベンが重要なのです。