ペーサーを抜いてはいけない決まりはない

西山以外からも「前半が遅かった」という声は上がったが、誰もアクションを起こすことはなかった。ペーサーに声をかける、もしくは前に出て、ジェスチャーを送ることで、外国人ペーサーのスピードを上げさせることはできただろう。

酒井政人『箱根駅伝は誰のものか 「国民的行事」の現在地』(平凡社新書)

新谷の場合は、ペーサーが日本人男子だった。スタート前に、「予定通りにお願いしますね」と念押ししたり、レース中に直接交渉したりするのは可能だったはずだ。

ペースメーカーはあくまで目安であり、抜いてはいけない決まりはない。これもSNSの議論で抜けていたかもしれないポイントだった。

1月の大阪国際女子では前田穂南(天満屋)が21km過ぎでペーサーの前に出て、日本記録につなげた。また2018年のベルリンでは、3人のペーサーが超高速レースに対応できず、15km過ぎから次々と脱落。25.7kmから独走するかたちになったエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間01分39秒の世界記録(当時)を樹立している。

東京マラソンで狙った記録に届かなかったのは、選手の実力不足に加えて、ペーサー任せのレースをしたことが原因だ。今回、涙を流した選手たちには、もっと実力をつけて、大胆にターゲットを目指すレースを期待したい。

関連記事
ついに"ナイキ離れ"か…「着用率95.7%→42.6%」箱根駅伝で王者を食った2ブランドが東京マラソンでガチ対決
NHK大河ではとても放送できない…宣教師に「獣より劣ったもの」と書かれた豊臣秀吉のおぞましき性欲
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育
日本野球のガラパゴス化が止まらない…世界中で導入が進む「時短ルール」を無視する残念すぎる理由
実は賃貸に住む建築家が多い理由…プロがこっそり教える「住宅会社が絶対に言わない"住まい"の真実」