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5~18歳の子供男女各145人の平日の睡眠時間と海馬の体積(局所灰白質量)を表したグラフ。

グラフにもあるとおり、10時間ぐらいまでは「睡眠時間の長さに比例して海馬の体積が大きくなる」という関係が成り立っている。そして、睡眠時間が1日5~6時間ぐらいの子供よりも、9~10時間ぐらいの子供のほうが海馬が1割程度大きかったという。

海馬が大きいほうが記憶力が良いという研究結果は複数ある。記憶力の負荷が高いロンドンタクシーの運転手は、一般人に比べて海馬の体積が大きいというのもその一つだ。

では今回の結果をもって、「寝る子は脳も育つ」と言ってしまっていいのだろうか。

「注意していただきたいのは、この研究はあくまでも睡眠時間の長さと海馬の体積の相関関係を明らかにしただけで、因果関係を明らかにしたわけではないということです。より長く眠っている子供のほうが海馬の体積がより大きいことは明らかになりましたが、必ずしも『長く寝れば寝るほど良い』とは限らないことを注意してください。今回の研究では、最大でも10時間程度の睡眠時間内での解析なので、これ以上長い場合はどうなるかは説明できません。ただ、睡眠時間が長すぎると、睡眠中に目覚める回数が増えるなど、睡眠の質が下がるという報告もありますから、子供を無理やり長く眠らせようとはしないでください」

では、「寝る子は脳も育つ」は誤りなのかというと、必ずしもそうとは言えないようだ。

「マウスで睡眠剥奪実験(無理やり眠らせない実験)を行うと、海馬の神経新生(神経が新しく生まれること)が抑制されることがわかっています。また、睡眠時無呼吸症候群のように、常に睡眠が浅い状態が続いている患者さんに海馬の萎縮が見られるのも事実です。つまり、『長く眠れば海馬が大きくなる』とは言い切れませんが、マウスの実験や睡眠時無呼吸症候群の患者さんの例から考えて、『十分に睡眠を取らないと海馬の体積が小さくなる』という因果関係が存在するのではないかと推測することは可能です」