女を低収入に縛りつける第3号被保険者制度

既婚女性の就労は増えました。けれど、家計を支えられるほどの収入を得ているわけではありません。彼女たちが不利な非正規の低賃金の仕事に就き、ずっと貧乏なままでいることはこれまでにお話ししたとおりです。

令和四年版男女共同参画白書」は、既婚女性がなぜ低賃金の仕事を続けているのかの謎を解いています。それは、昭和型の税制・社会保障制度があるからです。著者は林伴子さん、優秀な女性官僚です。

日本のありとあらゆる社会制度は、夫が大黒柱として働き妻が家庭を守るという昭和型標準世帯モデルでできあがっています。そしてその制度を40年近く維持してきました。この「白書」を発表した当時の男女共同参画担当大臣、野田聖子さんが、記者会見で「もはや昭和ではない」と発言したのは、この昭和型の税制・社会保障制度が時代に合わなくなっていることを意味しました。

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本当に「専業主婦優遇」なのか

昭和型というのは、サラリーマンの無業の妻に対して、昭和36(1961)年に配偶者控除、昭和60(1985)年に第3号被保険者制度、昭和62(1987)年には配偶者特別控除などの、いわゆる「専業主婦優遇」と呼ばれる制度が次々に整備されていったからです。配偶者控除はいわゆる「内助の功」に対するごほうび、第3号被保険者制度は、来るべき高齢化社会の介護要員としての嫁の貢献に対する報い、配偶者特別控除とは家計補助型のパート就労があたりまえになった既婚女性たちに対する配慮でした。いずれも男性稼ぎ主を前提としたサラリーマン・専業主婦体制という昭和モデルをもとに制度設計されたものでした。

これらの制度は、専業主婦優遇制度とも言われていますが、本当にそうでしょうか。

健康保険も雇用保険も年金保険もすべて保険、すなわち保険料を支払わないと受益者になれません。国民年金の1号被保険者は自営業者とその家族従業者、2号被保険者は雇用者、そこに3号被保険者という雇用者の無業の妻を新たにつけ加えました。国民年金の被保険者になるためには、たとえ無職・無収入であっても保険料を払わなくてはいけません。学生だろうと失業中であろうと、状況に応じて猶予はしてもらえますが、払わなくては将来の受給資格が生まれません。

ところがこの制度は、2号被保険者の被扶養配偶者、年収130万円までは「見なし専業主婦」とされる女性に、年金保険料を払わなくても基礎年金権を与えるという特権を認めました。その保険料の原資はすべての働く男女から拠出されています。ですから働く女性たちはこの制度ができるとき「わたしたちだって主婦をやっているのに、なぜわたしたちが専業主婦の保険料を背負わなければいけないのか」とブーイングしました。