貧困なのになぜ働かないのか?

夫の所得階層別で見ると、年収100万円未満の世帯で妻の有業率がもっとも低いことがわかります。「なぜ?」です。

働かない彼女たちを見ていくと、多くは学歴が低く社会的なスキルも低い、健康やメンタルヘルスに問題を抱えている、という問題が浮かび上がってきます。生活基盤における脆弱ぜいじゃく性があるから、男に対する依存度が高いのです。

彼女たちの母親もそうだったということもあります。男に依存する母親が、夫に殴られても蹴られても離れようとしなかったのを見ていると、それが世代間連鎖する場合もあるでしょう。

夫がDVでオレサマ化すると、家庭が閉鎖的になって妻は孤立します。誰にどうやって助けを求めればいいかという支援のルートにも彼女たちはアクセスがありません。スキルや意欲がある人なら「自分で稼ごう」となるけれど、スキルを身につける余裕がないばかりか、意欲を無力化されてしまいます。

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貧困層ほど「男は仕事、女は家事育児」を受け継いでいる

周燕飛さんの『貧困専業主婦』(新潮選書、2019年)は、この問題を取り上げています。周さんが貧困専業主婦と呼ぶのは、世帯年収が300万円未満の世帯の主婦です。その人たちの多くが働かない理由として挙げているのは「子育てに専念したい」です。彼女たちは健康やメンタルヘルスの問題があるのではなく、子どもを保育園に預けることに抵抗を示しています。「男は仕事、女は家事育児」という伝統的な性別役割分担意識を、貧困層ほど男女ともにそのまま受け継いでいるように思えます。