「豚骨ラーメン離れ」の真相

気になるのは、これだけ多種多様な非豚骨ラーメンが増えている昨今、福岡の人々の間における「豚骨ラーメン離れ」である。

豚骨ラーメン店にとってはピンチの状況なのか。この問いに対する識者ふたりの答えはNOだ。

「豚骨ラーメンに慣れ親しんできた福岡の人々のベースには豚骨への愛、大事にしている“豚骨ラーメン体験”があります。それゆえ非豚骨は、今日はラーメンを食べようかと考えたとき、豚骨と並ぶ選択肢のひとつになっている印象です。非豚骨には華やかなものも多く、全くの同列というよりは少しハレの気があるかもしれませんが」(山路さん)

「福岡の人は良くも悪くも保守的なところがあります。また、総じて郷土愛や地元意識が強く、モツ鍋、明太子に並ぶ福岡の名物として、豚骨ラーメンがあることを誇りに思っている人が多い印象です。福岡で生まれ育った僕自身も、大好きな福岡を盛り上げるため、とんこつラーメンという一観光資源になり得る食べ物を、より美味しくアップデートしながら提供し続けていきたいです」(山田さん)

このふたりの話を受け、福岡に住む女性(36歳)に尋ねると、「基本は豚骨ラーメンが好きなので、ラーメンといえば豚骨を食べることが多いが、非豚骨を食べたい気分のときもある。非豚骨はひとつの食カテゴリという認識」と言う。

豚骨は福岡から消えるのか

さまざまなカテゴリのラーメン店が存在する東京のような大都市と異なり、福岡のラーメンは豚骨がベースにあり、ラーメンといえば豚骨ラーメンという感性は人々の間で共通しているようだ。

さらに、豚骨ラーメンへの愛をたくさんの福岡県民から聞いた。「自分はどこどこの豚骨ラーメンが好きだ」と語れるくらいに。これは大きな都市ではありえない感覚だろう。

非豚骨ラーメン店は増えているが、豚骨ラーメン店も変わらず存在する。豚骨をベーシックなラーメンと捉える福岡の人々にとって、非豚骨はベーシックとは異なるラーメンのいちカテゴリである。非豚骨・豚骨は「共存」という形で、福岡の街にあり続けることだろう。

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