他のラーメンよりも高コスト

2つ目は豚骨ラーメンの製造コストは一般的に非豚骨ラーメンよりも高い点である。

店によって使う豚骨の量は異なるが、たとえば鶏ガラで出汁をとる醤油ラーメンよりも、豚骨ラーメンの方が高コストになると山路さんは言う。

鶏ガラは弱火かつ短時間、少量の骨で出汁がとれるが、豚骨は強火かつ長時間(24時間炊き続ける店も存在する)大量の骨を煮立てないと出汁がとれない。光熱費(ガス代)や人件費、材料費、事業系ゴミ袋代などの処理費などをトータルで考えると、豚骨の方が、支出は大きいのだ。

コスト事情については、福岡市博多区に3店舗を展開する「博多一双」創業者で、EVORISE社長の山田晶仁さんに聞いた。

「博多一双」の「味玉チャーシューメン」。クリーミーで濃厚な豚骨スープから生まれた独特の泡は「豚骨カプチーノ」と評判を呼び、店の外には連日長蛇の列ができる
筆者提供
「博多一双」の「味玉チャーシューメン」。クリーミーで濃厚な豚骨スープから生まれた独特の泡は「豚骨カプチーノ」と評判を呼び、店の外には連日長蛇の列ができる

博多一双では24時間炊きっぱなしではないが、営業中は3つの寸胴鍋に入ったスープを強い火力で炊き続けている。国産の子豚の頭骨、背骨、げんこつを下処理し、高い火力で骨がホロホロになるまで3つの寸胴を使って長時間炊き上げ、「呼び戻し(※)」という技法でスープを作っている。

※創業当時から空にしない寸胴があり、毎日その寸胴に別の寸胴でとった新しいスープを少しずつ継ぎ足しながら作る「呼び戻し」という技法。その日必要な分量のスープを1から作る技法「取りきり」よりも高コスト

原価率は他のラーメンよりも高い

厨房ちゅうぼうのガス台に目をやると、近くの水道から水が流れ続け、鍋底に4~5cm程度の水が溜まっている。なぜずっと水を流して、鍋の底を冷やしているのかと尋ねると「鍋の変形を防ぐためです」と山田さん。

高い熱効率を維持する設備が備わった特殊なガス台で、鍋を高火力で熱し続けていると、鍋が簡単に変形してしまうのだ。そのため、鍋を火にかける間は水も流しっぱなしになる。先に挙げた光熱費だけでなく、水道代の額も大きくなる。豚骨は非豚骨と比べて原価率が高い傾向にある、と山田さんは話す。