EC売上はぶっちぎりの業界トップ
ヨドバシカメラは、都市圏の主要ターミナル駅近くに大型店舗を展開しています。
東京でいえば新宿、秋葉原。大阪・梅田のマルチメディア梅田は売上1000億円を超える同社最大規模の店舗です。コロナ禍に入ってからも、山梨・甲府、宮城・仙台に地域最大級の店舗を開業しています。
図表1をご覧ください。家電量販店業界では、ヤマダデンキのヤマダホールディングスが圧倒的な売上規模ですが、ヨドバシカメラはそれに続く売上高7000億円台の第2グループの一角を占めています。
売上規模だけで見れば第3位ですが、経常利益は業界首位のヤマダホールディングスに迫る勢いで、経常利益率は6.5%もあります。薄利が常識の家電量販店業界の中で比較すると、相当に高い利益体質といえるでしょう。
また、ヨドバシ・ドット・コムによるEC売上は、総売上の3割近い2136億円。売上1位のヤマダホールディングスと2位のビックカメラを大きく引き離しています。
ビックカメラとの出店戦略の違い
最近、ヨドバシカメラは西武池袋本店への出店計画をめぐって話題を集めました。
結局、同社は、2023年9月にセブン&アイ・ホールディングスから米国投資会社フォートレス・インベストメント・グループに売却されたそごう・西武から、西武池袋本店、そごう千葉店の土地・建物の一部を購入。
これにより、西武池袋本店、そごう千葉店への出店が実現に近づき、また西武渋谷店への出店も現実味が帯びていると言われています。
ヨドバシカメラの池袋出店で戦々恐々としているのが、池袋を本拠地に旗艦店を構えるビックカメラです。
池袋には、以前にも現ヤマダデンキ(当時はヤマダ電機)が三越池袋店跡に出店していますが、駅から少し離れた場所にあったため、ビックカメラの圧勝でした。
しかし、池袋駅に直結の西武池袋本店への出店となれば状況は変わります。
もともと、業界2位のビックカメラと業界3位のヨドバシカメラは、両者共にターミナル駅を中心に出店し、鎬を削っています。
ただし、出店立地が似た両者でも、出店形態や資金力には明確な違いがあります。
ヨドバシカメラは、百貨店クラスの売場面積に家電量販店を核とした複合商業施設として組成することを得意としています。大きな資金を必要としますが、駅近至便に加え、同社自身、強い集客力がありますから、有力なテナントも入りやすい環境にあります。ここ最近の開発物件(リニューアル含む)には、破竹の勢いで拡大を続ける食品スーパーのロピアの出店が目立っています。
一方、ビックカメラの場合は、テナントとしての出店。大きな資金は必要としませんが、家賃上昇のリスクがあります。
資金力については、ヨドバシカメラは、2002年に大阪・梅田の敷地(現リンクス梅田)を1010億円で落札し、借入なしの現金で支払ったと言われており、手元資金は潤沢にあります。それに対し、ビックカメラは有利子負債が資産の3割近く(約29%)を占めるなど、借入への比重が大きくなっています。