100円程度の日用品を多く取り扱う理由

ヨドバシカメラのここがすごい! ②顧客との接点を継続してつくる

次は、「楽しくない買い物も、あえて重視している」ことです。

いったいどういうことか、ヨドバシ・ドット・コムの品揃えから紐解いてみたいと思います。

1998年、オープン間もない頃のヨドバシ・ドット・コムの品揃えは300~400アイテムでした。それから取扱いカテゴリーおよびアイテム数の拡大を図り、2008年8月時点で約8万アイテム、2012年3月には約83万5000アイテム、2018年6月時に約550万アイテム、2023年1月時点では800万アイテム以上を取り扱っています。

カテゴリーの拡大に関しては、2013年にコミックの取扱いを開始し、2018年に酒類販売をスタート。翌2019年には薬剤師による服薬指導が必要になる第一類医薬品、ICI石井スポーツ、およびその子会社アート・スポーツの買収によりスキー・登山用品を中心としたアウトドア関連用品、ランニング・トレイルランニング・フィットネス用品を追加しました。

いまのところ生鮮(青果、精肉、鮮魚)の扱いこそありませんが、食品、日用品など、購買頻度の高いカテゴリーの品揃えを増やしているように感じられます。1本100円程度のボールペン、100円にもならない電球もあります。

なぜ、どこでも手に入るような、低価格帯の商品も増やしているのでしょう。

「楽しくない買い物」で顧客との接点を維持する

もともとヨドバシ・ドット・コムは、家電やパソコンなど、高単価な商品がメインでした。しかし、一度購入すれば5~6年は買う必要がありません。これは、数年間、顧客との関係性が希薄になることを意味しています。これでは、次の家電やパソコンの買い替え時に、購入先としてヨドバシ・ドット・コム(あるいはヨドバシカメラ店舗)を検討してもらえるかどうか、わかりません。

その顧客接点の空白期間をなくし、日常的な顧客接点を維持するために(=何かを購入する際に、最初に思い出してもらうため)、価格は安いが購買頻度の高い商品群を増やしていると考えられます。

わざわざ店舗まで足を運ばなくとも、いつでも、家に居ながら買い物ができるネット通販が身近な存在になり、生活者自身が「楽しい買い物」と「楽しくない買い物」を強く意識するようになりました。

楽しい買い物とは、「買い物をしている時間」が幸せに感じられるもの、つまり「モノを手に入れる」ことより「時間消費」に価値を感じる買い物のことです。趣味にまつわる買い物はもちろん、ウインドウショッピングや店舗スタッフとの会話が楽しめるお店での買い物もそうでしょう。