人は日々、無意識のうちに商品やサービスを選択している。おトクな選択をするためには何に着眼すべきか。コストパフォーマンスの3達人が“コスパ”の仕組みを激白する。
森永卓郎●獨協大学経済学部教授
1957年、東京都生まれ。80年東京大学経済学部卒、日本専売公社(現JT)入社。2006年より現職。近著に『年収復活!』『モリタク流ポイントカード徹底活用術』など。
金子哲雄●流通ジャーナリスト
1971年、千葉県生まれ。94年慶應義塾大学卒。ジャパンエナジー(現・新日鉱ホールディングス)などを経て独立。近著に『「値切り」のマジック』『超三流主義』など。
藤川 太●生活デザイン代表取締役
1968年、山口県生まれ。93年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。マツダを経てFPとして独立。近著に『貯まる!資産3倍手帳』『20代から始めるお金の設計』など。
――大量仕入れ、大量出店の効果という視点からCPを語っていただきましたが、金子さん、CPを判断する視点はほかにもあるのでしょうか。
【金子】立地です。立地はすごいです。たとえば、東横イン……。
【森永】東横インね。確かに安いと思うけど、僕はあんまり使わないな。じゃらんのネットで当日の叩き売りを探したほうがいいよ。いい出物があると、高級ホテルに5000円で泊まれたりするからね。出物がないと悲惨だけど。
【藤川】私はもっぱら新幹線とセットになった出張パックを使うので、パックのホテルに泊まります。出張パックはおトクですよ。ホテルをキャンセルしても、通常の往復料金より安い。旅行代理店が一括で大量仕入れをして、それをバラバラにして販売するらしいです。
【金子】東横インが安い理由は、実は、地形にあります。例の事件が起きる前、当時の副社長に伺ったのですが、東横インは主要駅から3分以内で、地形の悪い場所に集中的に出店しているというのです。つまり、通常ならコインパーキングにしか使えないような形の悪い土地ばかり狙って投資をしている。副社長によると、1棟5000万円ぐらいで建つとおっしゃっていました。また、東横インには、収益化しづらくホテルの癌といわれるレストラン機能がありません。駅に近いため、周辺に飲食店が多い。つまり、飲み食いは外でしてくれというわけです。ついでに言えば、冷蔵庫もカラっぽ。飲み物も外で買ってきてくれと。こうして、徹底的にコストを下げているのです。東横インは、いわば睡眠特化型ホテル。眠るだけなら、絶対に東横インです。スーパーホテルは温泉を付けたりして、若干アメニティーを意識しているところにビジネスホテルとしての割り切りの甘さを感じます。割り切り勝負では、東横インの圧勝です。