【藤川】家電量販店の立地も重要ですね。現代の一般的な家電の買い方は、まず量販店で実際に商品を見て、価格.comで底値を注文するという流れだと思いますが、激戦区の量販店に行くと、価格.comより安い値段で出ている場合がある。特に型落ちの場合は信じられないほど安い場合があります。私は、新宿西口のヨドバシカメラで型落ちを買うのが、最も高CPだと思います。型落ちでも、何の問題もありません。

【森永】型落ちは本当に安いよね。僕は、川崎にあるヨドバシのアウトレット京急川崎(型落ち展示品専門店)で買うよ。新型が出た直後、前のモデルの値段がガクンと下がる。そのタイミングを狙って買うのが一番だよ。

【金子】新宿西口ヨドバシカメラ! まったく正しいと思います。激戦区の量販店を狙うのは定石ですが、私の場合、激戦区の中で、駅から最も遠い量販店を狙います。たとえば新宿西口には小田急ハルクの中にビックカメラが入っておりますが、ヨドバシカメラより駅に近いので集客力が高い。一方、ヨドバシカメラは駅から遠い分、来てくれた客を大切にしなければなりません。それゆえ、値引き交渉がしやすい。駅近指数が高いと値引きしにくく、駅近指数が低いと値引きしやすいのです。さらに、ハルクのビックは地下道から雨に濡れずに入店できますが、ヨドバシは地下道を出て10メートルほど屋外を歩かねばならない。この10メートルが、あたかもベルリンの壁のごとき意味を持つのです。私は雨の日、傘を持たずにずぶ濡れでヨドバシに買いに行くことにしております。この姿で行くと、値引き交渉力倍増です。同様のことが池袋東口におけるビックカメラとヤマダ電機の立地関係でもいえます。駅近指数が低いヤマダのほうがビックより気持ち安いことが多いですね。

家賃が安い店舗Dが狙い目!
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家賃が安い店舗Dが狙い目!

もう一点、立地について語らせてください。実は郊外では、交差点の四つ角それぞれで家賃が異なるという現象があるのです。図のように、ABCDという4つの店舗があった場合、家賃はA→B→C→Dと安くなっていきます。なぜなら、朝より夕方のほうが店内滞留時間が長いので、夕方の交通量が多い下り車線にある店舗のほうが集客力が高く、しかも、信号の手前だとブレーキを踏んで店に入る可能性が高いため、A立地の家賃が一番高いのです。反対に、信号の先ではアクセルを踏んでいるので店に入る可能性が低いため、上り車線・信号先のD立地が最も集客力が低く、家賃も安い。それゆえ、D立地にある店舗が最も値引き交渉をしやすい。つまり、ロードサイドの家電量販店の場合、D立地を狙えということです。逆に資金力のあるマック、セブン-イレブン、吉野家といったリーディングカンパニーは、ほとんど安定した集客が見込めるA立地を確保しています。実地に検証していただくと面白いと思います。

※すべて雑誌掲載当時

(山田清機=構成 梅原ひでひこ(人物)、坂本道浩(商品、店舗など)=撮影)