メジャー流出の最大の責任は日本球界にある
要するに、今、NPBで起きているMLBへの人材流出は日米プロ野球の経済格差の産物なのだ。
MLBに移籍しようとする若者を引き留めるために必要なのは「裏切り者」と声を浴びせかけることではなく、NPB側がありとあらゆる経営努力を重ねて、MLBにせめて拮抗するレベルまで経済を高める努力をすることなのだ。
MLBに挑戦する選手たちは、ことあるごとに育ててもらった故郷、母校への感謝を口にする。この度の能登半島の震災では、大谷翔平は間髪を入れず100万ドルもの義援金を送ったとされる。彼らは、NPBからMLBへ移籍することの意味も、日本人の国民感情もよく理解している。そして「日本」「日本野球」を決して忘れてはいない。彼らはわかっているのだ。
実は30年ほど前まで、日米プロ野球の経済格差は、ここまで大きくはなかった。1990年の選手の平均年俸は、NPBが1964万円、MLBが6578万円と3倍強だった。その差がひろがったのは近年のことなのだ。
この間に、MLBは「北米4大スポーツ、NBA=バスケット、NFL=アメリカンフットボール、NHL=アイスホッケー、MLB」の中で最もファン層の年齢が高く、劣勢に回っている態勢を挽回すべく、さまざまな改革を進めた。
しかし、NPBは「昨年対比」でマイナスにならなければそれでよし、という安全運転をずっと続けた。その経営姿勢の差が、ここまでの格差につながったのだ。
ポスティングで日本のトップ選手たちがアメリカにわたる責任は「薄情な若者」にあるのではない。「冒険をしない」「改革をしない」日本野球界の「大人たち」にあるのだ。
「攻めるベンチャー集団」に変われ
人材流出を防ぐために、障壁を設ければ選手の反発を買うし、NPBを経由せずMLBに挑戦する選手が増えるだけだ。
せめてMLBに対抗できる経済力をつけるために、NPBは機構にビジネス権限を与えて、12球団をパッケージにして「ビッグビジネス」を展開すべきだ。もちろん今の「名誉職」のコミッショナーではなく、国際ビジネスができる本物のビジネスマンをコミッショナーに据えて「ビジネス、価値の最大化」のために努力すべきだ。
「現状維持で良し」という経営を排除し、12球団、そして機構を「攻めるベンチャー集団」に変貌させるべき時が来てる。