日テレ旧本社跡地再開発に逮捕された元区議や元区職員が関わっていた

この計画がこじれているのは、日テレや日テレの計画を引き継いだ区が、計画の説明や住民理解を求める対応が不十分で、不適切との指摘があるにもかかわらず、拙速に計画への賛否を住民らに問うたこともある。さらにそこにとんでもない事件が起きた。

この計画を、審議する区・都市計画審議会(都計審)委員だった嶋崎秀彦区議(当時)は1月24日、官製談合容疑で同区の元担当部長とともに逮捕された(※)。これを受け、区議を辞職した嶋崎容疑者が関係した再開発事業・計画をすべて調査するべきだとの声があがったものの、区執行部はなぜかそれを半ば無視し、立ち止まることなく計画を進める姿勢を明確にしたのだ。

※2人は、2020年5月の区立お茶の水小学校・幼稚園の空調設備と給排水衛生設備の工事の一般競争入札において、別の区職員と共謀。業者側からの依頼を受けて最低制限価格に近い数字や参加業者数を浜松市と千代田区の計2業者側に伝え、入札の公正を害した疑い。

区では、来年度予算案などを審議する区議会が1月30日に全員協議会を開催。一部の区議は、逮捕者が関係した案件の調査の必要性など対応をただしたが、樋口高顕区長は捜査が進んでおり、「いま事実認識を申し上げることは控えさえていただきたい」などと話すのみ。小林孝也区議が「区として家宅捜索を受けたのは初めて」と指摘して区長に発言を促すが、区長は答弁を拒み、副区長などが代弁した。不可解なのは、逮捕者問題で区長に対応や認識をただした区議はたった4人だけということ。残る区議は静観するだけの姿勢で、異様な雰囲気の協議会となった。

2月1日の環まちでは、住民などの意見書で計画に賛成が1804、反対807だったと公表。環まちでも、逮捕者が関係した案件調査の必要性などを一部区議が指摘。しかし、計画推進派とみられる区議が「審議は十分」との認識を示し、区側担当幹部も「早く結論をつけていただきたい」などと話し、逮捕者問題で立ち止まらず、計画通りに手続きを進めていく意向を示した。この推進派とみられる区議は「賛成があれば、反対があってもいい。双方の意見があったのだというのが大切なこと」と話した。

樋口区長は事件を受けて、再発防止策をとると表明。しかし、これまでの案件の調査も必要との声には答えていない。こうした姿勢を問題視する指摘が相次いでいる。

「逮捕者問題があったのに、そのまま計画を続ける区は腐っている」と話すのは、一級建築士で「番町の町並みを守る会」の大橋智子共同代表だ。

グロービス経営大学院(二番町)の堀義人学長もこの計画について「嶋崎容疑者と日テレとの関係性が問題になり、審議を止めて(両者に)関係があるのか、真っ先に解明されることを住民が望んでいる」などと話した。

撮影=筆者
千代田区役所が入るビル

建築の専門家「高さ80mにしなくても“地域貢献”はできる」

日テレと区が進める再開発計画そのものを問題視する都市計画の専門家もいる。東京大学名誉教授で明治大学特任教授の大方潤一郎さんは次のように指摘する。

「(もともと)住民が地区計画で高さ60m以下の街並み形成を進めてきたが、日テレは自社用地のみに突出した容積割増を受けるため、再開発等促進区地区計画をその地権者の3分の2の同意を得ることなく、変更する提案を提出した。日テレと区行政が計画のメリットとする広場緑地や地下鉄からのバリアフリーなど公共貢献に対し、高さ80mの超高層ビルが建つことで空の広く見える街並みが破壊されるデメリットのほうがはるかに大きい」

さらに、こうも付け加える。

「街区公園相当の広場を確保し、割増された容積率700%を実現しても、広場の一部をピロティ型(建物の1階部分を柱だけの空間にして、広場を確保するもの)にして、エリアマネジメント施設をビル内に取り込むなどの工夫をすれば、高さを60m以下に抑える計画も可能です」

この計画に対しては、影響を受ける建設予定地周辺の複数の学校法人などから陳情書が提出されている。2月1日開催の環まちで陳情書について議論も可能だったが、なぜか議会手続きが止められていて、議論できなかった。ある区議は「かなり恥ずべき行為」と吐露した。