地元民「日テレは住民を分断している。迷惑だ」
都心で皇居に近い千代田区の番町地区は、江戸時代は武家地だった。現在は文教・住宅地として落ち着いたたたずまいを残すが、今、ある騒ぎが起きている。
日本テレビ放送網(以下、日テレ)などを抱える日本テレビホールディングス(本社:港区)が超高層ビルを建てようとして、地元住民の賛否が割れる事態となっているのだ。地元では「住民を分断して迷惑」などといった声も出ている。
舞台は千代田区二番町、日テレが汐留に移る前の旧本社跡地。高さ制限は60mだが、日テレは規制緩和で高さ80mの商業ビルを建てる計画で、区側がそのまま引き継ぎ地区再開発計画として推進する。
この計画をめぐり、区が今年1月に住民や通勤者などに意見書を募った結果、賛成が反対を大きく上回った。しかし、計画推進派が賛成へ勧誘した手法を問題視する指摘が相次いでいる。
番町地区のある住民は昨年末、居住するマンションで開催された当該商業ビル計画についての日テレの説明会に参加した。説明者は日テレの不動産事業部幹部など3人。この住民は日テレの説明について「開発の正しい情報をお伝えしたいということでしたが、高さ60mでは地域貢献ができないと断言していました。みなさんのためなのですとも強調していました」と話す。
つまり、高さ制限が60mのままだと、計画されている広場をつくることや、東京メトロ(有楽町線麹町駅)からのバリアフリー化などの地域貢献が十分にできないと、日テレ側が強調していたという。詳しくは後で紹介するが、実は高さ60mでも計画された広さの広場の確保など、地域貢献ができることを都市計画の専門家は代案として提起している。問題は、説明会で高さ80mの計画に賛成するよう住民を誘導しているのではないかという疑いがあることだ。
この住民の証言によれば、日テレ側は「低層にしたほうが建築コストは安くなり、テナントも入りやすくなりますが、地域貢献をしたいため、あえて選択しました」という趣旨の説明もしたという。
さらに、議会質疑でこんな事例も明らかになった。小枝寿美子区議は、「計画の広場でバーベキューやキャンプもできるので賛成してくださいと住民にお願いする区議もいた」と、住民から聞いていると指摘。ところが、区側担当者はその議会で「広場をどう使うかは今後考えることになっている」と答弁し、小枝区議は正しい情報で住民に説明されていないと指摘。2月1日開催の区議会・環境まちづくり委員会(環まち)での質疑だ。