プチプラだけでなく高級路線も狙う
韓国の女の子たちに「コスメの聖地」と呼ばれるヘルス&ビューティストア「CJオリーブヤング」は、2020年に東京と大阪で自社ブランドのポップアップストアを展開したのを皮切りに、日本へ本格進出。翌2021年に常設店を2店舗出店。2023年12月には日本の女性たちが「コスメの聖地」と呼ぶアットコスメ東京でポップアップストアを展開した。この3年間で自社ブランド製品の日本における売り上げは年平均2倍のペースで増加している。
また、新生ブランドも日本市場を狙った戦略樹立に力を入れている。
韓国最大の医薬品流通企業「ミファーム」が新設した機能性化粧品ブランド「GLINARD(グリナード)」は、高級原料を使用した製品をリーズナブルな価格で販売する戦略で、韓国より先に中国、タイ、オーストラリアなど海外で大きな成功を収めていた。現在は韓流スターマーケティングを通じて今年中に日本進出を目標にしている。
「アンチエイジング効果があるとされる最高級の日本製シルクフィブロインを主原料としながら、韓国の技術力をもとに製品価格を画期的に下げたのが自社の最大の強みだ。現在、日本で人気のある韓国化粧品より価格帯が高いため、デパートへの出店やビューティーインフルエンサーを活用したバイラル・マーケティングを通じて日本市場への進出を図っている。安定性と機能性を重視する日本の消費者から良い評価を得られると確信している」(グリナード代表 イ・ヒョンス氏)
中国ではシェア暴落…課題はブランド価値の向上
ただ、韓国産化粧品が日本で人気を維持するためには、シェアが暴落した中国市場を反面教師にしなければならないという業界の分析がある。中国は日本に先んじて韓国化粧品がブームになったが、最近は国産化粧品の品質向上とともに「愛国消費の熱風」で韓国化粧品のシェアが減り続けている。
「中国では中低価格ブランドは自国産製品が、ハイブランドはフランス製品や日本のSK-IIなどが韓国製品を押し出している。原因はブランドパワーを育てることに失敗したためだ。化粧品は文化商品であるだけに、ブランド価値を高めなければ気まぐれな消費者にそっぽを向かれるというのが中国市場の教訓だろう。
現在、日本で人気を博している韓国産化粧品はほとんどが中低価格ブランドで、言い換えればブランドパワーよりコストパフォーマンスで若年層に選ばれているということ。シェアを維持するためには、流行に敏感な若年層だけでなく、ブランドロイヤルティが強い中年層にも選ばれるようにブランディングに力を入れなければならないだろう」(前出 ホ・ガンウ記者)
ファッション業界紙のWWDが集計した「グローバルビューティー企業トップ100」(2021年基準)に日本企業は13社ランクインしたのに対し、韓国企業は3社のみ。「コスメ大国」という名声に比べ、ブランドパワーが確立されていないという限界を示している。日本国内の韓国化粧品の人気を支えている韓流コンテンツも、いつまで流行が続くかわからない。ブランドパワーで勝負できる戦略を打ち立てることが韓国化粧品業界の目下の課題になるだろう。