麻生派はかろうじて結束を維持しているが…

第二派閥の麻生派はどうか。

麻生氏は派閥存続の意向を真っ先に岸田首相に伝えた。麻生・茂木・岸田の主流3派体制に君臨し、安倍氏急逝後は唯一のキングメーカーとして権勢を誇ってきただけに、自らの権力基盤である派閥を手放すわけにはいかない。今のところ離脱者は長年行動をともにしてきた岩屋毅元防衛相にとどまり、麻生派はかろうじて結束を維持している。

しかし世論の風当たりは強い。茂木氏に代わって麻生派幹部で義弟の鈴木俊一財務相や岸田派に所属していた上川陽子外相を擁立する構想もあるが、「派閥の権化の麻生氏に担がれたというだけでマイナスイメージが強い」(閣僚経験者)という政治状況が生まれ、麻生氏はキングメーカーの座から滑り落ちそうな気配だ。麻生氏も83歳。いったん求心力を失うと挽回は容易ではない。

麻生派で鍵を握るのは、河野太郎デジタル担当相である。麻生氏は世代交代を恐れ、河野氏を抑え込んできた。河野氏は前回総裁選に麻生氏の政敵である菅義偉前首相に担がれて出馬したが、その後も麻生派にとどまった。茂木派の小渕氏に続いて麻生派を離脱し「河野派」結成に動く好機のはずだが、今のところ慎重だ。このまま出遅れれば埋没する可能性もある。

岸田派解散を歓迎するナンバー2

第四派閥・岸田派(宏池会)で実は派閥解散を歓迎しているのは、ナンバー2の林芳正官房長官だろう。林氏は宏池会では岸田首相以上に将来の首相候補と目されてきた。米中に人脈を持ち、英語も堪能で、外相として存在感を増していたところ岸田首相に警戒され、昨年9月の内閣改造人事で交代させられた経緯がある。

岸田首相が退任した後も宏池会会長にとどまれば、林氏が宏池会を代表して総裁選に出馬しにくくなる可能性があった。岸田首相が自ら宏池会を解散した結果、宏池会再興は林氏を軸に進むことは確実とみられ、岸田首相という「目の上のたんこぶ」が自ら消えてくれたともいえる。逆に「林派」への道筋が見えてきた。

第五派閥の二階派は84歳の二階俊博元幹事長の求心力で結束を維持してきたため、今後は草刈り場となりそうだ。

写真=iStock.com/fotoVoyager
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派閥解消は「新しい派閥」を生み出すだけ

派閥解消は派閥再編のはじまりである。派閥を舞台とした裏金事件を機に、今年の総裁選に向け、自民党内の派閥勢力図は激変するだろう。自民党の新旧世代による政局の攻防をウオッチしていくのは確かに面白い。

もっとも、派閥を舞台とする裏金事件を招いた政治腐敗は、派閥の「偽装解散」では浄化されない。自民党が30年前に掲げた「派閥解消」が空文化したまま今日まで脈々と続いていたことからも明らかだ。

政治資金規正法の改正による「政治資金の透明化」こそ政治改革の核心であることは、決して忘れてはならない。

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