警察官に女性関係までしつこく聞かれる
登の住んでいるアパートは小学校の側で、登は夜間から早朝にかけてのシフトのため、昼間は自宅におり、夕方から仕事に出る生活を送っていた。登の自宅には何度か警察が訪れ、生活状況など詳しく聞かれていた。
「女性経験までしつこく聞かれて、なんでそんなこと言わないといけないのか、屈辱的でした」
しかし、犯人の目撃情報による容姿と、登の体形や髪形はあまりにかけ離れており、次第に捜査の対象からは外れたようだった。ところが、登の自宅には石が投げられたり、ドアの前に鳥の死骸が置かれたりといった嫌がらせが始まったのだ。
「警察が連日うちに来るのを近所の人は見ていたでしょうから……、僕が犯人だと疑われているようです。いつも使うコンビニとか、飲み屋にも怖くて行けなくなりました」
噂は、登の職場にまで広まっているようだった。
「いままで私生活のことなんか聞かれたことないのに、上司にはいろいろ聞かれるし、周りもよそよそしいんですよ」
登は帰宅する度に、自宅に何か嫌がらせがされているのではないかと、鍵を開ける瞬間が怖くなった。
「いつまでこんな思いをすればいいのか……。早く犯人を捕まえて下さいって泣きながら警察署に駆け込んだこともありました」
しばらくして、隣町に住む無職の男が逮捕され、容疑を認めていると報道された。
「やっと終わった……」
登は胸を撫で下ろした。
犯人逮捕後も危険視される
ところが、自宅の郵便受けには風俗店のチラシが大量に入れられたり、昼間、寝ていると玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると誰もいないといったいたずらは止まらなかった。
職場の人々のよそよそしい態度も変わらず、親しくしていた友人に率直に聞いてみると、この付近でまた女児を狙った事件が起きていて、登はまた犯人視されているのだという。
「この地域では一度、噂が出るとなかなか消えないんですよ。本気で疑ってるのか面白がってるのかわかりませんが……、いちいち、『僕は犯人じゃありません』って説明して歩くわけにいきませんし……」
登はこの件をきっかけに上京している。
「あんな経験するまでは田舎が好きだったんですが、いまでは、人目の気にならない都会が自由で本当に楽です」