第3の罠の原因は「やれやれ売り」

金融危機での第2の罠を乗り越え、一度はマイナスになった資産が、徐々にゼロに近づいてきて、プラスに転じます。まさにこれからというタイミングで、多くの人は「プラスのうちにやめてしまおう」「いったん売却して様子を見よう」と考えがちなのです。

相場が回復したときに「やれやれ」という気持ちで安心して売ってしまうので、このような行動を「やれやれ売り」と呼びます。

過去のデータを見れば、マイナスからプラスに戻ったタイミングでやめずに持ち続けていれば、相場はその後も上昇していく可能性が高いことがわかっています。しかし、損益がプラスからマイナスに変わる経験をしたあとは「また同じ経験はしたくない」という気持ちになりやすく、「やれやれ売り」の罠に陥りやすいのです。

ウェルスナビの利用者のデータを分析すると、さらに興味深い事実が見えてきます。「やれやれ売り」をした利用者のうち、一定割合の方が、その後、さらに相場が上がると、ウェルスナビでの資産運用を再開し始めているのです。

もちろん、相場が上がってから資産運用を再開したため、「やれやれ売り」をした時点よりも高い株価で資産運用を再開することになります。結果的には、「やれやれ売り」で資産運用を中断せずに、そのまま続けていたほうが“得”でした。

「やれやれ売り」の心理的な罠を回避することが大切です。

長く続けるほど、長期投資の効果を実感しやすくなる

3つの罠を乗り越えて「長期・積立・分散」の資産運用を継続できるようになると、資産はどうなっていくのでしょうか。ウェルスナビの利用者30万人以上のデータをもとにご説明します。

【図表2】柴山和久『新しいNISA投資の思考法』より

図表2からわかるように、運用を開始して半年、1年という時期には、リターンがマイナスの方が一定割合でいます。ところが、2年目になると、93%の人がプラスのリターンになっています。

さらに、3年、4年、5年と運用期間が長くなるにつれて、リターンがプラスになるばかりか、20%以上の含み益の方の割合が増えていきます。

長期投資の目安は、前述の通り「10年以上」です。5年という期間で効果を見るのは「短い」といえます。しかし、続けることで、長期投資の成功に向けて前進しているイメージを持つことができるのではないでしょうか。

長期投資を成功させるためには、安定したリターンを得て、不安に襲われずに済むようになる時期まで、いかに我慢できるかが重要です。新たに長期投資をスタートさせたみなさまには、ぜひとも「3つの罠」の存在を知っていただき、「長期・積立・分散」で自分らしい投資を実現していただければと願っています。

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