第3の罠
急減したリターンが回復すると、それ以上続けられなくなってしまう
さらに注意が必要なのが、相場急落後の回復時に待っています。資産が急減したあと、徐々に金融危機前の水準まで回復して、プラスに戻ったタイミングで長期投資をやめたくなってしまう。これが第3の罠です。
具体的な例を見てみましょう。
2020年の初めに世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大した際、金融市場は大きく混乱しました。世界的に株価が大きく下落し、「パニック売り」と呼ばれる行動が連鎖しました。
コロナ・ショックのときは、2019年末のS&P500を100とすると、1カ月で約3割下落しました。
この時期、ウェルスナビでは、私自身のビデオメッセージを発したり、投資を続けていくうえでの疑問や不安にニュースレターやコラムでお応えするなど、利用者の方々の長期投資をサポートするための努力を懸命に続けました。
その成果もあってか、相場が急落した1カ月間を見ると、1円でも解約してお金を引き出した方は全体の5%に留まりました。つまり、95%の方はそのまま資産運用を継続したのです。
コロナ・ショックを乗り越えたタイミングで離脱者が増加
それから半年あまり――。
相場は少しずつ回復していきました。コロナ・ショックの発生から約9カ月が経った2020年11月には、S&P500はコロナ・ショック前の水準に戻り、さらに上昇していきました。
しかし私は、コロナ・ショックを乗り越えたこのタイミングこそ、「長期投資を中断する利用者が増えるのではないか」と危惧していました。その懸念は、まさしく現実のものとなってしまったのです。
株価がコロナ・ショック前の水準まで回復した直後の1月あまりで、コロナ・ショックの最悪期を上回る数のウェルスナビ利用者が長期投資を中断してしまいました。