リターンがゼロから遠ざかると一喜一憂しなくなる

長期投資を始めたばかりのときには、まだ慣れておらず、不安を感じています。まさにそのタイミングで、小さな相場の動きに一喜一憂しては、強いストレスにさらされます。

ところが、リターンがゼロ付近から遠ざかり、プラス20%くらいになると、脳が受ける影響は変わってきます。たとえば、プラス20%のリターンが1日で3%下がったとしても、不思議とそれほどストレスは受けません。そればかりか、まったく気づかないことすらあります。

始めたばかりで、プラスとマイナスの付近をリターンが行ったり来たりしているときに、1日で3%も資産が減ったら大きなショックを受けます。しかし、長期投資の効果が表れてきて、リターンがゼロから離れていくと、私たち人間の脳はストレスを受けにくくなるのです。

このため、長期投資に挫折する第1の罠は、長期投資を始めたばかりのタイミングで訪れるといえるのです。

第2の罠

繰り返し訪れる金融危機で、積み上げてきたリターンが急に減ったタイミング

長期投資に挫折しそうになる第2の罠は、金融危機などで、積み上げてきたリターンが急に減ってしまうときに訪れます。

床を突き破って下方向に突き進む赤い矢印と、それを眺める男性
写真=iStock.com/tiero
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長期投資を始めてしばらく経ち、リターンもある程度のプラスになっていたとします。そのタイミングで金融危機が発生し、それまで積み上げてきたプラスのリターンが大きく減ってしまったとします。

そのとき、資産の全部(あるいは一部)を売却して、安全な資産に移したくなるのです。安全な資産に移せば、それ以上資産が減るのを食い止められる、と考えるからです。

金融危機によってリターンが減っていくときは、1日や2日で一気に減るわけではありません。毎日少しずつ、徐々に減っていきます。また、日によっては少し回復したと思ったら、翌日にはまた下がるということもよく起こります。

このような形で、せっかく増えていた資産がどんどん減っていくのを見ると、不安が募るのも当然です。損益がまだプラスのうちに資産運用をやめて現金に戻したくなりがちです。