心を打たれた鎌倉武士たちの「死に様」

さて、1位の前にふと気になって調べたのは今回のベスト5作品で最多出演の俳優。

3作品に出演したのは片岡愛之助、野添義弘、前原滉、横田栄司、春海四方、芹澤興人そして杉本哲太だった。名作を支える名優たちを密かに称えておこう。

1位 生々しい愚かさ、失笑と鳥肌のバランス、主人公の変貌、すべてが優勝

「鎌倉殿の13人」(2022年) 260点

北条さんちの凄絶せいぜつな悲劇に、最初から最期まで虜だった。

牧歌的で平和主義、出世欲も皆無だった一人の青年・北条義時が残虐非道な粛清の政治を経験し、人の心を失いながら上り詰めていく。

主演の小栗旬が全48話で驚きの変貌を遂げ、最終話で見事な死に様を魅せた。人それぞれの名場面があると思うが、姉・北条政子(小池栄子)に見下ろされて絶命した最終話を上げる人も多いのではないか。

私の好きな場面は、サザエさん式にまとめるなら「広常、畳の上で無念の粛清」「政子、後妻打ちで矜持を知る」「全成、安請け合いで非業の死」かな。

上総広常を演じたのは佐藤浩市。「武衛」の意味を知らず、字も超下手(一所懸命練習する姿が哀しい)。浅学だが人望は厚く情も深い。クセのある豪族を統率する力もあり、脅威と判断した源頼朝(大泉洋)が見せしめに粛清。武衛が頼朝の尊称と知らぬまま、皆の前で斬殺される。広常の無念の死は、義時が人の心を失うターニングポイントでもあり。

「光る君へ」の面白さはこれから

ふたつめは、仕組まれた「後妻打ち」を機に、頼朝の正妻が妾と対峙たいじする場面。漁師の妻だったが夫をさっさと捨て、頼朝の妾となった亀(江口のりこ)は、野卑で強欲と思いきや! 時の権力者に添うために教養を身に付け、想像を超える努力をしていたことがわかる。

正妻・政子もお人好しというか素直で、喧嘩するどころか亀に教えを乞う。御台所から尼将軍へと、意に反して上り詰めてしまった北条政子の基礎がここにあったと思う。

最後は、義時の妹(宮澤エマ)の夫・阿野全成(新納慎也)の理不尽な死。NOと言えない心優しい全成があれよあれよと追い込まれて、非業の死を迎える。しかも義父母(坂東彌十郎・宮沢りえ)の企みのせいで! 呪術も占いも外れっぱなしの禅師が、絶命寸前に奇跡を起こすという皮肉もまた悲しくて号泣した記憶が。

今月始まった「光る君へ」は、ちょい遡って平安時代中期。まひろ(紫式部)と三郎(藤原道長)の因縁と運命の出会いが描かれ、仕掛けは上々。

初回は最低視聴率と報道されたが、千年たっても変わらない人間の生臭さを大石静が描ききるはず。「平安時代のセックス&バイオレンスを描きたい」と語ったようなので期待している。

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