1963年からNHKで放送されている歴史ドラマシリーズ、「大河ドラマ」。平成から令和にかけて放送された「大河ドラマ」の中で、最も評価されるべき作品はどれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが選んだ「NHK大河ドラマ」ベスト5とは――。
独断と偏見だけでランキングを作成
新年早々、約10年の大河ドラマを振り返る暴挙。
日々つけているドラマ視聴ノートを読み返すと、2パターンに分かれることに気づく。ひとつは、途中でメモすることを諦め、面白くない……と書いてある「断念型」。もうひとつは最終話まで欠かさず無駄にメモをとり続けた「熱中型」。すっかり忘却の彼方だったが、意外と好きな作品もあって自分でも驚いた。
今回は21項目を設けて点数をつけた。項目でベスト1には倍の加点を。今年もやるよ、独断と偏見しかない大河ベスト5。
ドラマを盛り上げた「コンプレックスの妙」
5位 暴君にも帝にも「モノ申す&空気読む」の明智光秀が新しかった
「麒麟がくる」(2020年) 130点
エリカがアレでわやだったり、麒麟がくる前にコロナがきちゃって、明智光秀の呪いとまで言われたが、懐かしくて新しくて美しくて哀しい、形容詞が羅列できるくらい面白かった。
勇猛果敢でも華麗でもない、深謀遠慮の明智を演じたのは長谷川博己。主君・斎藤道三(本木雅弘)から審美眼や大局観を学び、若き暴君・織田信長(染谷将太)に仕え、人間の本性を見定める難しさを見事に体現。庶民にも主君にも武将にも帝にも、そして女にも好かれちゃう“人たらし感”は適役だった。
また「兄弟コンプレックスの妙」は高く評価したい。明智の幼馴染・斎藤高政(伊藤英明)は優秀な弟たちとは異なり、不出来かつ嘘つき。謀って弟たちを殺しただけでなく、父・道三の命も奪う。
信長も同様、母に溺愛される弟・信勝(木村了)を殺害した話は有名だが、もうひとり、比叡山僧侶で帝の弟・寛如(春風亭小朝)の容貌コンプレックスも根深くて、妙に印象に残っている。きょうだいの美しさや聡明さに嫉妬し、承認欲求が歪んで「化け物」になってしまう悲しさ。
人間関係の接着剤となった架空の女たち(門脇麦&尾野真千子)の存在がご都合主義と言われるかもしれないが、これはこれでグッジョブ。