子供が質問してきた理由を考えてみよう

一方で、「社会とはそういうもの」という考え方が、自分なりの考えとして想像することを抑制してしまう可能性も否定できません。また、同調圧力や認知バイアスにより思考が固定され、悩み、葛藤することによって得られるはずの、自分の感情や考え方に気づく機会を失いかねません。

ここで先ほどの、子供からの宿題に関する質問に戻ってみましょう。

「社会とはそういうもの」という一般論から離れ、「なぜその質問をしたのだろう」という、相手の本意に触れられるような視点で反応してみると、答えの内容も、会話の方向性や着地点も、かなり変わります。

「とにかくやりなさいよ」と、強制する言い方を避けて「それはいい質問だね」「それは深い質問だね」などと受け止めて「一緒に考えてみよう」「どうしてなんだろう」「どうしてそう思うの?」などと反応してみると、子供が自分の立てた問いの価値に気づくきっかけにできるのではないでしょうか。

答え方によっては親子の信頼関係にヒビが入る

実際に、私自身、娘が小学校中学年だった頃に、「こんなに疲れているのに、どうして何時間もかけて宿題をやらないといけないの⁉」と、うんざりした様子で質問された経験があります。

彼女は、日頃から宿題を早く済ませて、自分の好きなことに時間を使うという計画性と、実行力があるのですが、うんざりしていたのには理由がありました。

それは、その日は宿題の提出方法がオンラインだったのですが、先生が提出先を設定するのが遅れ、児童たちが夜遅くまで待たされていたという状況があったからなのです。

「そんなのみんな同じ状況なのだから仕方がない」といえば、そのとおりですが、その反応で娘は納得できないでしょう。むしろ、「そんなこと私が一番、わかっているわ」と、イライラを増長させ、「ママは自分をわかってくれない」と思われ、信頼関係にヒビが入る可能性すらあります。