購買データは誰のものか?

このように購買データやアクセスデータを広く共有することで企業側にもメリットがあるが、生活者側も自分の購買履歴を元にお薦めをしてもらえるなどのメリットが出てくる。もちろんアマゾンの中であればアマゾンで購入したり、アクセスした商品履歴からさまざまなお薦めがされたりするのも便利であるが、自分の購買履歴をよく使う別の楽天やヤフーなどに知らせることで、適切なお薦めをしてもらえると嬉しい。この時、顧客の購買履歴、行動データは誰のものか?という議論が出てくる。

これまでは購買データは企業側の企業秘密として表に出てくることは無く、まして他社と共有するという発想がなかなかなかった。しかし、購買データというローデータはプライバシー情報も大量に含むためやはり生活者個人のものであるべきだろう。当然履歴の消去を申し出る権利も生活者側にある。第3回のコラムで述べた通り、こうした個人のマルチパーソナリティを前提とした行動情報を管理する主体が今後は必要になるのだろう。

そして、それを解析した結果、何を進めるべきかというデータは事業者の価値なので事業者のものである。現在携帯電話番号は違う通信会社に移動することができるが同様に自分の行動データも「データポータビリティ」ということで企業間の移動や共有を利用者自らの判断で自由にできることで、共同マーケティングも行いやすい土壌ができあがるだろう。グーグルやfacebookなどのプラットフォーム企業もこうしたデータポータビリティへの取り組みを始めている。

データポータビリティへのGoogleの取り組み
http://jp.techcrunch.com/archives/20110630google-takeout/

ただ、プラットフォーム企業からするとこうした動きは自らの強みを喪失させてしまうリスクもあるため、囲い込みとオープン化のバランスを見ながらの動きになっていくだろう。

いずれにしても最終的に顧客のある側面におけるライフスタイル全般の行動情報から付加価値の高い提案をできるかどうかが企業側の重要な勝負になることは間違いない。これまでのリサーチにおける顧客インサイトではなく、リアルタイムでより広範な顧客理解と対話が求められる時代。自社での取り組みとどのようなプラットフォームを選択するべきか、マーケティング投資が戦略的投資になる時代は確実に来ているようだ。