中学受験の良さは「正しい勉強のやり方」を身につけられること
中学受験をする良さは、「日々の学習習慣が身につく」「目標に向かって努力をする経験ができる」「より高度で良質な問題に出合える」などさまざまなメリットが挙げられるが、最も良い経験となるのが、10歳〜12歳の頭が柔軟なときに、正しい勉強のやり方を身につけられることだと思う。
正しい勉強のやり方とは、問題文の読み方だったり、答えの導き方だったりといった勉強の作法をはじめ、過去の経験や知識と新しい知識を自分なりに関係性を理解しながら結びつけるといった「考える型」が身につくことだ。この正しい勉強のやり方が身につくと、中学受験で成功するし、大学受験でも成功し、それによって将来の選択肢が広がり、結果、医学部進学も可能となる。つまり、一生使える力となるのだ。
これを間違えて、大量暗記やパターン学習だけで勝負しようとすると、中学受験ではなんとか難関校に滑り込めたとしても、その後で伸び悩む。「自分なりに試行錯誤しながら考えた」という経験をしてこなかった子は、概念理解や因果関係の理解ができていないまま、ただパターンで解こうとする癖がいつまで経っても抜けない。すると、必ず高校の数学でつまずいてしまう。特に医学部の入試は高度な数学になってくるので、とても太刀打ちできなくなる。
高1くらいになってから目指す子もいる
繰り返しになるが、「医学部に進学させたいから、中学受験で難関校を目指す」という考え方自体はあながち間違えてはいない。だが、そこで正しい勉強を身につけられるかどうかで、結果は大きく変わってくる。そのことを親は十分に理解した上で、中学受験を検討してほしい。
最後にひとこと加えると、もちろん、私立中高一貫校に進学しなくても医学部を目指すことはできる。全国的に見れば、その方が圧倒的に多いだろう。また、小さいときから医者を目指さなくても、高1くらいになって、世の中のいろいろなことを知るようになった中で、「僕も医者になって人の役に立ちたい」と強い意志を持って医者を目指す子もいるし、「将来は医者になって、お金持ちになる!」と言い出す子もいる。
どんな理由であっても、それが本人の中から湧き出てくるものであれば強い。「医学部を目指すには、こんな難しい勉強をしなければいけないんだなぁ」と現実を思い知って、頑張る努力をするからだ。最終的には本人のモチベーションほど効力のあるものはない。そして、忘れてはいけないのが、子どもの将来は、子ども自身が決めるということだ。