「もうこのレールから降りたい」言えない子ども達

または課金に課金を重ねて、なんとか得点力を上げるテクニックを身につけ、難関校に合格できたとしても、その先の中学・高校で失速してしまう子もいる。そういう家庭では、決められたレールを走らせることが、医学部進学への近道と信じ、中学入学と同時に、今度は難関大学進学のための予備校や塾にわが子を放り込む。そうやって、決められた狭いレールを走らせることになる。親にもその狭いレールしか見えていないのだ。

だが、そこでも大量学習が待っている。中学受験ですでに疲れ切っているのに、さらにまた6年間頑張り続けなければいけない。「もうこのレールから降りたいんだけど、降りちゃダメなの?」そう言いたいけど、言い出せない子ども達を、私はこれまでに何度も見てきた。すべては親の見栄から始まった悲しいシナリオだ。

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「間違えた勉強のやり方」では安定した学力は身につかない

誤解をしないでいただきたいのが、「安易に医学部進学を目指すな」と言いたいわけではない。また、医学部進学を目指すのに、中学受験をすることもあながち間違えてはいないと思う。実際、難関私立中高一貫校では、医学部に進学する生徒は多いし、まわりにそういう友達がいれば、仲間と切磋琢磨せっさたくましながら、夢に向かってチャレンジしやすい。

私が何よりも懸念しているのは、難関中学合格だけを目標にして、間違えた勉強のやり方をしてしまうことだ。中学受験の目標は志望校に合格することではある。だが、何がなんでも合格させるために、幼少期の“学びの土台”を地固めする大事なときに、「あなたは勉強だけ頑張ればいいのよ」と机の上の勉強だけをさせて、遊びから遠ざけたり、家のお手伝いをさせなかったりすると、安定した学力は身につかない。基礎工事のできていないところに無理やり立派な家を建てるような状態になるからだ。

また、子どももいつも追い立てられる状態になり、「とりあえず、お母さんから言われた通りにやっておこう」と、ろくに問題文を読まず、途中式や図も書かずに答えだけ書いて、ドリルをやったという形跡だけを残すような勉強をするようになる。さらに、気持ちに余裕がなくなると、「これ以上点数が下がって、親に叱られるのは嫌だ」とカンニングに走る子もいる。そうなってしまうと、中学受験をすること自体がマイナスになってしまう。