自動車後進国ベトナムの「タクシー革命」

東南アジアでは、本格的な自動車の普及はこれからである。ベトナムでの自動車の普及は日本より50年、中国より20年は遅れている。現在、ベトナムの年間自動車販売台数は約50万台に過ぎない。それは日本が445万台、中国が2683万台であることを考えると、極めて少ない。

そんなベトナムではスマホを利用したグラブに代表されるタクシー・システムが急速に普及した。数年前まで、ベトナムのタクシーは信頼できなかった。遠回りをしたりメーターを改造したり、外国人だけでなくベトナムの人々もその柄の悪さを嫌っていた。

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しかし、数年前からスマホを用いたシステムが普及し始めると、状況は大きく変わった。ここで重要な役割を果たしたのが白タク(免許を持たない一般人が運転するタクシー)である。ベトナムでは、誰もがスマホを用いてタクシー業を始めることができる。その結果、自家用車を持っている人が暇な時間を利用して、小遣い稼ぎを始めた。また、自家用車を貸して、借りた人がタクシーとして使うことも増えた。

一般の人がタクシーを安心して使えるようになった。スマート・タクシーでは動いた道筋が記録に残る。決済もスマホで行うことができる。現金で払ってもよいが、現金を使わなくてもよい。そんなシステムでは過大な請求をされることはない。

白タクの登場でみんながハッピーに

人件費が安いこともあり、ベトナムのタクシーは安い。それに加えて、白タクがライバルになったために、プロのタクシーはよほどサービスを良くしないと、白タクにお客を奪われてしまう。

シェア経済の良い面が出たようだ。まだ地下鉄が一路線もないベトナムでは、人々は常に移動手段に困っていた。そんなベトナムでは、スマホを用いたタクシーが急速に普及した。

それはプロのタクシーの運転手にとっても、悪い話ではなかったようだ。なぜなら、流しでお客を探す必要がなくなったからである。料金が安いこともあって、すぐに客からスマホに連絡が入る。具体的なデータは知らないが、空車率は下がったと思う。その結果、観光地での強引な客引きも減った。

日本ではタクシーが信頼できるものであり、かつタクシー業界が過当競争気味であることから、スマホを使った白タクが許可されることはなかった。しかし、ベトナムではタクシー業界が幼稚な段階にあったために、スマホを利用した白タクが許可されて、それは交通手段に革命的な変化を及ぼした。