ライバルの和泉式部や清少納言を手厳しく批判した

関幸彦『藤原道長と紫式部』(朝日新書)

ちなみに『紫式部日記』には和泉式部や清少納言についての批評らしきものが見える。「和泉式部といふ人こそ、おもしろう書きかはしける」(趣深い手紙のやり取りをした)と彼女の歌才を認めつつも他人の歌を非難することも少なくなく、そんな性格は感心できない旨が語られている。また清少納言についても「したり顔にいみじうはべりける人」(得意顔もはなはだしい人物)と手厳しい。中関白家に仕えた清少納言への対抗心もあったにしても、いささか冷ややかだ。

この両人の場合はその性格的ベクトルは、“外”だった。そして、それに比べ式部は明らかに“内”なる方向に向けられる。『源氏物語』を結晶化させた式部とは、そんなタイプだったのかも。そんな内面を象徴するかのような歌が『紫式部集』に見えている。「身の憂きは心のうちに慕ひきていま九重ここのえぞ思ひ乱るる」。華麗な宮中に身を置きつつも自身から切り離せない「身の憂き」が語られている。内省的な彼女の性格が見て取れる。

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