海外の投資家から投げかけられた疑問

新卒で日本興業銀行(現みずほ銀行)に入った私は、その後独立して国際金融の現場に身を置いてきました。海外の投資家とともに、日本企業の経営者やIR(投資家向け広報)の責任者との面談に同席した経験は900社を超えます。

ある日本企業を訪問した帰り際、海外からの投資家がこんな言葉を放ちました。

「日本人は謙虚な国民だというのは十分承知している。しかしながら、あれほど自信がなさそうにプレゼンされたら、自分の仕事に自信がないと言わんばかりではないか? なぜ自分の会社について説明するのに原稿を読まなければならず、我々と目も合わせないのだ?」

自社の成功事例を競う海外のプレゼン大会に顧客と同席することもありました。

そこで目にしたのは、17カ国の代表者のなかでも際立って弱々しかった日本の発表者のプレゼンです。内容は申し分なく、スライドのデザインも素敵で、英語の文法だって完璧──でも何かが足りないのです。

写真=iStock.com/mapo
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日本人は情熱を抑圧し、希望や夢を封印している

それは、「自分はこういう人間なんだ」という自信、そしてそんな自分が抱く強い気持ちをぶつけて「相手に理解されよう」「変化を起こそう」という、内から湧き上がる情熱なのではないか。

そう気づきました。

「自分の意見や思いは公の場で披露するものではない」
「事前に根回ししてから発言すべきだ」
「行間を読んで、忖度そんたくする必要がある」

このような文化のもとで私たちは、ほとばしるような情熱を抑圧し、本来持っていた希望や夢を封印してしまっているのではないか。人間が持つ根源的な力を削がれたまま仕事をしているのではないか。

ずっと抱き続けてきた疑問が沸点に達した瞬間でした。

日本の「話す力」を鍛えなければいけない――。

そのとき、私の目が向いたのは「子どもたち」でした。