東京23区は1000万円以上なければ厳しい
8大都市以外の合計では、世帯年収の最頻値が500万円台であるのに対し、8大都市は最頻値こそ600万円台ですが、それに続くのが1000万~1250万円の世帯になります。わかりやすくいうと、大都市では1000万円以上の世帯が最頻値となるのです。
世帯年収の中央値を計算すると、大都市以外は636万円、8大都市は760万円となり、その差は約130万円です。ちなみに、東京だけの中央値は958万円、東京23区だけに限れば中央値は1026万円となります。
つまり、東京23区で6年以内に出生した子有り世帯の半分以上が世帯年収1000万円以上ということです。逆に考えれば、東京23区では世帯年収1000万円以上なければ、子どもを産み育てるという活動がなかなかできないということでもあります。
合計特殊出生率が全国最下位といわれる東京ですが、その中でも港区、中央区、千代田区など高所得層が多く住むエリアだけが出生率を伸長させていて、かつて子沢山の区として東京都全体の出生率を押し上げていた、足立区、葛飾区、江戸川区といった下町3区の出生率は激減しています。結婚や出産が経済的に余裕のある層しか選択できない「贅沢な消費」となっているというのはこういうことです。
「東京は合計特殊出生率が低い」の誤解
そう考えれば、20代の若者が、東京をはじめ8大都市へ流出してしまうのも当然です。地元にいても稼げる仕事がないからです。実際、生涯賃金の高い大企業は東京や大阪などの大都市に集中しているわけですから(〈地元の仕事では「年収300万円の壁」を超えられない…結婚できない若者を生み出す「36道県」の残酷な現実〉参照)
そして、出生数と婚姻数は強い正の相関があります。婚姻数が少なければ確実に出生数は減ります。これも多くの人が勘違いしているのですが、東京の合計特殊出生率が最下位なのは計算母数が15~49歳の全女性人口のため、未婚人口が多ければ自動的に低くなってしまうためです。
実出生数の推移だけ見れば、全国的に出生数が激減している中で、2000年以降の出生数を増やしているのは実は東京だけです(さすがに2020年以降は東京も下がりましたが)。そして、婚姻率の全国トップも長らく東京ですし、婚姻率の上位もほぼ大都市で占められます。