中間層が子どもを産まなくなっている

結婚や出産の消費化とは、これらを実施するためには「まず、お金が必要」という前提に変わってしまったことです。しかも、この結婚と出産は、ちょっとした趣味レベルの消費金額とはわけが違います。

人生をかけた大きな消費活動になるわけで、将来の見通しもないまま決断することはできなくなっています。消費は消費でも、生きる上で必要不可欠な消費ではなく、もはや高級車や高級バッグを買うような「贅沢な消費」と変わってしまいました。

事実、児童のいる世帯数は2000年と2022年とで比較すれば、25%も減少していますが、大きく減少しているのは、以前はボリュームゾーンだった世帯年収400万~600万円の中間層だけです。むしろ、世帯年収900万円以上の場合は22年前とほぼ変わっていません。

要するに、ある程度の年収がある者だけが結婚と出産ができているという状態に陥っているのです。これは児童のいる世帯の平均年収だけが、現役世代の平均年収と比べて近年高くなっていることからも類推できます。

出生数の半分以上が8都市に集中する異常事態

児童のいる世帯の世帯数が減っているのに反比例して平均年収があがっているのは、元々年収の高い層しか子どもを持てなくなったことを意味します。これは、男性は、年収の高いほうから順番に結婚しているという事実とも符合します。

【図表】児童のいる世帯数は減少も年収は上昇

都道府県別に見ると、より興味深い事実がわかります。

2022年の就業構造基本調査より、6年以内に出生した子有り世帯だけを抽出して(6歳未満の末子のいる子有り世帯)、都道府県別にその世帯年収分布を世帯数ではなく、子どもの数合計として見たものです。

実は、年間の出生数の半分以上は大都市8エリア(首都圏、愛知、大阪、兵庫、福岡)だけで占められます。この8大都市の子ども総数(6歳未満末子のいる世帯のみ)は、317万人で、残りの39道府県全体の267万人を大きく上回ります。
そして、その子有り世帯の世帯年収分布を見ると、その両者で大きく構造が違うことがわかります。

【図表】6年以内に出生した世帯年収別子どもの数