「できなかったこと」を嘆くと、会話がつまらなくなる

若いときには楽々とできたことが、老いてくるとできなくなります。

ほとんどの人が60歳頃から自分の体力や知能の衰えを感じていきます。徹夜はできない。旅行から帰ってくると疲れて2、3日ダウンする、たくさん荷物が持てない、知っているはずの固有名詞が出てこない、できなくなっていくことをあげればきりがありません。

あなたのまわりにも、会えば「できない話」ばかり話す人はいませんか。

「もう、目がしょぼしょぼして、テレビ見るのもおっくうだし、本も読まないわ」と会えば同じ話をします。そういう人になってしまうと、友達も同じような人ばかり集まり、みんなでできないことの自慢合戦になることもあるでしょう。

ただ、こういう方は家族や若い人に疎まれやすくなります。

若い人には日々衰えていく肉体の感覚はわからないものです。同世代なら「わかるわかる」と盛り上がれる話でも、若い人は共感するすべはないのです。その結果、会話は退屈なものになります。

「子や孫がわかってくれない」と嘆いても仕方ないのです。彼らにはわからないのです。あなたが若いときに高齢者の思いをおもんぱかることはできたでしょうか。

できれば、同世代以外の会話の中でできなくなったことを嘆くことはやめましょう。つまらない高齢者と思われるだけです。

ひとり暮らしの87歳男性の日課「具沢山の味噌汁をつくる」

また、年上の人にもできないことを嘆いても、80歳以上の方はできないことの最先端を生きているので、「あなたなんてまだまだよ」とあしらわれます。

できなくなっていくのは生物学的に仕方のないこと。そこにこだわり続けていると、老人性うつ病になりかねません。

それよりも、いまできることを大切にしていきましょう。

できることがまだまだあるはずです。本が読むのがつらくなったら、オーディオブックという手もあります。手元の新聞や雑誌などにゆっくり目を通すのもいいでしょう。

新しい話題を仕入れてみる努力をしてみましょう。わからないことは調べたり、若い人に聞いてみたりします。そんな努力をしてみることが老いた脳には大事なのです。

自由な心で暮らすとは、いまの自分を肯定することです。昔の自分とは比べない。もう昔の自分はいないのです。でも、円熟したあなたがいます。まだまだ、あなたにはできることがあるはずです。それを喜んでいきましょう。

夜更かしできないのは当たり前のことです。脳は睡眠によって脳の老廃物をデトックスしています。認知症予防には睡眠は大事な要素になります。

「夜更かしできなくなった」ではなく「たくさん寝ている」ことを喜びましょう。「仕事がない」と悲観するより、「この収入でどうやりくりするか」の冒険の生活を楽しみましょう。

現在は便利なものがたくさん出てきました。それらの機器ができなくなったことを助けてくれます。

ある87歳のひとり暮らしの男性の日課は、具沢山の味噌汁をつくることです。それさえあれば、買ってきたお惣菜ひとつで心豊かな食事ができるそうです。いろいろできなくなってきたけれど、今日も味噌汁をつくることができた。

写真=iStock.com/Yuuji
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そのことを話してくれるだけで、まわりの人に明るい気持ちを持たせることができるんだなと私は思いました。

ぜひ、今日は何ができたと話してみてください。できたことだけではなく、きれいな雲を見たとかトンボが飛んでいたとかでもいいのです。あなたの発見も話してみましょう。同世代の会話でも、違う流れが出てきますし、若い人もあなたの話に耳を傾けてくれるかもしれません。