中距離用のEVを60万円で発売
インド政府は2030年までに、新車販売の30%をEVとする目標を掲げ(当初は30年にすべてをEVにするという触れ込みだった)、EVの普及と国内EV産業の育成とを推進している。三輪車は、タクシーや配送車両などの商用がほとんど。政府は商用EVの普及に力を入れる一方、州によっては商用ガソリン車が乗り入れできない地域を設ける規制の動きも現れている。
こうした事情もあり、インドでは三輪を中心に、EV化が進んでいる。
テラモーターズは、2010年に現会長の徳重徹氏が創業。日本ではEV充電器の設置を展開するが、インドにEリキシャで進出したのは14年。15年から本格参入したが、当初は品質が安定せずに事業は不調だった。そこで、17年からシャーシーやボディーなどの調達先をインドから中国に切り替え、品質を安定させて事業は拡大していく。
工場はインド東部の西ベンガル州コルカタにあり、コロナ前の19年度の販売台数は約1.2万台。前述の通り当時の市場は約10万台だったので、当時の約40社のなかでトップに躍り出ていた。
鉛電池搭載車で始めて、22年からはリチウムイオン電池搭載車を発売した。ちなみに、現在の車両価格は鉛搭載が25万円、リチウムが32万円。リチウム搭載車両は3時間の充電で100~120km走行可能だ。また、来年にはL5のリチウムイオン電池搭載車両を60万円で発売していく。
テスラとは“真逆”の戦略でシェア拡大を狙う
販売台数は21年度が1.5万台だったのに対し、今期は2万台を見込む。
市場の急拡大により、インドの財閥系 からスタートアップまで参入が相次ぎ、テラモーターズは上位5位内に入る。駅伝に例えるなら、1区の終盤に5人が”団子状態”で先頭集団を形成して走っている状態だろう。
米テスラは富裕層を対象にした高級車からEVの普及を進めた。これに対しテラモーターズは、貧しい人々が稼ぐための小さな商用車両から入った。21年には金融事業を開始。低所得者でもローンでEリキシャを購入できて、タクシーや運送で事業を始められる仕組みを築く。
さらに、22年には日本での事業ノウハウを生かし充電インフラ事業にも着手した。これまでにインド全土で開拓した350社の販社の店頭にも充電器を設置。充電器は欧州方式(CCS2)を採用。
四輪や二輪にも使えるが、同社のEリキシャへの給電料金を一般客よりも安く設定していく考えだ。これにより、ユーザーは競合よりも安く長い距離を走行でき、その分収入は増え、ローンの返済も楽になる。
「車両、金融、そして充電インフラと、3事業を展開するのは当社だけ。相乗効果は大きい」と上田氏。